2019串柿ツーリング [鍋谷峠-平-大久保-中畑-堀越観音-蔵王峠-滝畑ダム]
和歌山県かつらぎ町は、正月飾り使われる「串柿」の特産地。11月になると串柿がすだれ状に吊るされ、山間部の集落がオレンジ色の帯で飾られる。その美しい風景を紹介したくて2011年から串柿ツーリングを開催しているが、昨年までの3年間は大腿骨骨折や、仕事が多忙だったり、天候不順でまともに開催できなかった。
久々にベストシーズンの11月半ばに開催を企図した今年の串柿ツーリングだったが、以前のように人数が集まりすぎるのを恐れて宣伝を控えめにした。それが仇になったのか、重なる行事が多かったせいか、募集に応じてくれたのは6人と少人数。5人は知人だったが、堺在住のKさんがブログを見て参加してくれた。
7:30荒山公園集合だが、少し早めに現地入りしていると、次々参加者がやってくる。KさんはかなりカスタマイズしたTern C8で参加してくれた。私を含め6人中3台が小径車という、とても山を上るツーリングと思えない集団。他はロード1台、シクロクロス1台、シクロクロス改造ツーリング車1台と、車種はバラバラ。
自己紹介をして、7:45頃出走。すぐコンビニに寄ってお昼ごはんを調達し、まずは通い慣れたトレーニングコースを鍋谷峠に向かって南進する。
トレーニングよりはゆっくりだが、初対面のKさんもかなりの健脚で、トラブルもなく順調に進んでいく。できるだけリラックスして走れるルートに迂回したりもしたが、8:50頃には父鬼集落の南横山八幡神社に到達して小休止。
毎度のことながら、停車する度に自転車談義で盛り上がってしまう。人数が少なく、走り慣れた方ばかりなので、ここまで順調すぎるほどの進行だが、ほどほどで切り上げてもらい、再出走。
鍋谷峠にアタックする自転車乗りの多くは、製材所前の鍋谷橋からタイム計測を開始する。ここからいよいよ本格的な上りだが、一時停止するとまた自転車談義が始まる(^_^;)。
話を断ち切って、9:17再出走。ここからは無理せず各自のペースで上ってください、と伝えていたが、だれも全力アタックしない。
結局、のんびり話しながら一団で上っていくことになった。普段は全力アタックなので、周囲の風景に目をやる余裕もないが、久々にのんびり上ると鍋谷峠も新鮮だ。
周囲に比べれば重量のある折りたたみ自転車のKさんはさすがに大変そうだったが、それで37分30秒ほどで鍋谷を上り切る健脚ぶりを見せた。ここでのタイムロスを心配していたが、降水確率0%の天気といい、例年になく出来すぎの進行。
峠に自転車女子3人組がいたので挨拶したら、2015年の串柿ツーリングで途中まで見送ってくれた、サクラさんだった。図々しく、我々の集合写真を撮ってもらった。
こちらは女子3人組。CARACLE-COZに興味を持ってくれたので、調子に乗って峠で折りたたみのデモンストレーション。
走りはロードバイクと遜色ないし、軽いので輪行が楽ですよ、と主催者が参加者を放ったらかしでお仕事。
続いて上がってきたロードバイク集団にも、以前サイクルモードライド大阪でCARACLE-COZを見たことがあるという方がいて、重量や価格に対する質問に営業トーク連発。結局、鍋谷峠に30分近く滞在してしまい、主催者が自分で自分の足を引っ張る展開(^_^;)。
ようやく再出発となったが、CARACLEスタッフのIさんは、午後から用事があるのでここでお別れ。見送られて和歌山県側に下っていく。
ちょっと下ると、平の集落が見下ろせる。
遠目ながら、オレンジ色の帯が集落に立ち並んでいる姿が見える。まずは、あそこまで降ります、と下りを再開。
平の集落まで降りてきて、今度は集落内の急坂を上る。相当の急坂だが、これはまだ「並み」の激坂。
今回は時期も良かったのか、集落中に立ち並ぶ串柿は例年にも増して見事なものだった。朝の寒さも緩み、青空との対比が美しい。
「串柿は冷たく乾いた風が吹き下ろし、山霧が立ち込める当地の気候が適しており、一節には豊臣秀吉が献上された当地の干し柿を食べて病が治ったことから、推奨したとも言われている。一串に10個刺してあり、2個6個2個と間を開けてあるのは「夫婦ニコニコ(2個2個)仲睦(6つ)まじく」という語呂合わせ・・・」といった毎度の解説は、参加者のほとんどは聞き飽きていると思うが、お約束だ。
山里に 蒼天と競る 柿の朱
数年前に作った句の焼き直しだが、こんな句も頭をよぎる。
平集落でも充分なほど串柿を拝めたが、ここから最大の生産地である大久保集落に最短距離で上る激坂が今回のコースのメインディッシュ。この道はGoogleマップには掲載されていない間道で、なんとか軽自動車が通れるほどの道幅。コンクリート舗装こそされているが、著名な暗峠を越える傾斜と荒れた路面に横切る水切り溝、そして落ち葉や小枝などが行く手を遮る。下見の際にはアケビを踏んで後輪がスリップし、なんとか転倒は免れたが、ハンドル先端で太ももを強打した。私もまだ無着陸登頂は達成していない。
今回のメンバーは皆健脚で、序盤の急傾斜を乗車して上ってきた。下見の時に比べれば路面が乾いて落ち葉も少ないので、コンディションは良い。傾斜が緩み、景色が良いところで一時停車。
こんな急傾斜の途中にも人家があり、やはり串柿を干している。
その先は最近改修されたようで少し道幅が広く路面も比較的きれいなのだが、一方で終盤の傾斜は絶望的なまでに増し、まさに壁のように立ちはだかる。そんな中でも服部産業のH本さんは、自社のWilierゼロ・セッテを駆ってジリジリと上っていき、坂の上に消えていった。
続くN田さんは道幅を活かした蛇行戦術を取ったが、道を横切る水切り溝を避けきれずに、叫び声とともに停車。
私は3番手で挑むが、やはり厳しい傾斜に全身の筋肉を動員する必要がある。油断をすると前輪が浮くか後輪が空回りするので、背筋と腕力で車体を押さえつけ、パワースリップしないように足の力をコントロールする。スピードは虫が止まるほどなのに、心拍数はこの日最高の180bpm達する。それでも、下見の時より路面状況はマシなので、無事に急傾斜区間を通過した。
傾斜が緩んだところで後続を待つ。何と、C8のKさんも乗車して上ってきた。実は相当な脚力の持ち主なことが判明。傾斜が緩んでからではあるが、ピースサインをする余裕も。
今日は途中で景色を見たり、後続を待つために停車はしたが、傾斜に負けて足を付くことはなく上り切ることができた。路面コンディションさえ良ければ、COZなら無着陸登頂を達成できるメドがついた。
上り切った先は大久保集落。串柿の見どころ定福寺では、今年も串柿が迎えてくれた。11時過ぎだったが、ここで早めの昼食にした。
すっかりポカポカ陽気になり、のんびりと持参した昼食をいただく。今日は我々以外も串柿見物の観光客も多かった。串柿ツーリングを始めた2011年頃にはほとんど知られていなかったし、車でも不便な大久保まで見に来る人は少なかったと思うが、かつらぎ町のアピールもあって、年々観光客も増えている印象だ。
参加者が皆健脚だし、お陰で時間的余裕もあったので、コース変更を提案。せっかくなら同じ峠を越えて戻るより、違うルートを辿りたい。快く受け入れられた(?)ので、昼食後は蔵王峠方面に向かうことにした。
大久保集落の串柿を見物をしながら通過していく。庭や道端、屋根の上など、隙あらば串柿が干されている景観はこの季節ならでは。
とは言え、平集落と対照的に空の干し棚も多い。時期が良くないのかもしれないが、年々さびしくなっていく印象だ。立派な正月飾りを置く家も減っていると思うので、実需が減っていることも予想されるし、観光資源としては交通アクセスの良い平集落に分があるのかもしれない。3本のアクセスルートのどこを辿っても必ず激坂がある大久保集落は、苦労した甲斐がある最大の見どころだったのだが、少しその魅力が薄れている。
それでも、飾りものの串柿だけでなく、食用と思われる吊るし柿や、かごに入った干し柿なども見られたのは面白かった。
集落の外れのくるみ谷もみじ公園は、見事な紅葉。青空と周囲の緑葉との対照が美しく、しばし見惚れた。例年だと串柿ツーリングでは紅葉の盛りを過ぎていることが多いが、今年は開催時期が早く、紅葉が遅れたせいで、串柿と紅葉の両方が楽しめた。
くるみ谷の激坂を下り始めてすぐに、小径車の二人連れが上ってきた。ここまでの激坂に辟易しておられたようだが、「もう坂は終わりですよ」とお伝えした。お一人はブロンプトンで、車重とギア比的には大変だろう。
もうひとりはbenelliの電動アシスト自転車だがなぜかツラそうだったので、「バッテリーはまだ残ってるんでしょ?」と尋ねたら、急坂は前が浮いて走りづらいそうだ。ホイールベースが短く後ろ荷重なせいだろうが、アシストがあるから坂が楽というわけでもないことを知った。
我々は下っていく方だが、急坂なので充分に注意するよう声掛け。一気に文蔵の滝を通過した三叉路へ。もともとのコースだと、ここから下って再び国道480号線で鍋谷峠に向かう予定だった。予定を変更して、逆方向に上っていく。
ここもかなりの急坂区間なのだが、先ほどの規格外の激坂と比べれば可愛く思えるから不思議なものだ。当然、全員乗車して上っていく。この経路沿いの中畑集落も串柿の見どころだが、序盤は空き棚ばかり。
いささかがっかりしていたが、少し上ると例年通りの景観が現れた。ここから谷の反対側の大久保集落を見渡す風景はいつものことながら美しい。
少し先行して、参加者を撮影。急坂の苦労を忘れさせる絶景に今年も出会えた。
ひと上りして12:30前に堀越観音に到着。例年の串柿ツーリングだと大イチョウの葉が黄色くなって、ほぼ落葉していることが多いが。今年は緑葉のままだった。
ポカポカ陽気の境内でしばし休憩。ここでお会いしたクロスバイクの男性は70歳台で、和歌山市から走ってきたとのこと。私も70台でここに来る元気があるだろうか?
少しだけ上るとピークに到達。下りに備えて上着を羽織る。日なたは暖かいが、やはり日陰は寒々しい。
ひと下りすると、蔵王峠に到達。時刻は13時前。
ここでN田さんとお別れ。今日はわざわざ埼玉からお越しいただいたが、これから和歌山県側に降りて、紀の川沿いに和歌山市まで走るつもりとのこと。せっかく遠出していただいたので、関西を楽しんでいただきたいところだ。今回はキャノンデールのシクロクロス車を、ランドナー風に改造したツーリング車でご参加いただいた。こんな遊びも自転車の醍醐味だ。
我々は蔵王峠の大阪側を慎重に下っていく。府道61号線は谷筋の狭路で、晴天が二日間続いた後でも路面に水が流れている箇所が多く、自転車が汚れてしまうのが残念。近所の友人の新車を汚してしまったのは申し訳ないが、シクロクロス車なのが救い?
石畳のような区間もあり、府道61号線はなかなかの難路。私は勝手に奥河内のユイの壁と読んでいる。
滝畑ダム湖まで降りてくればひと安心。久々にダム湖の西側の遊歩道を通ったら、自転車が通過しやすいゲートが設けられていた。
自転車と歩行者を分ける白線が引かれ、自転車マークが路面に描かれ、路面も以前ほど荒れていない。良いサイクリングコースに整備されたので、今日もロードの一団が休憩していた。
滝畑ダムサイトで一時停止。下流方向の岩壁に磨崖仏が掘られているので、それを紹介。実は何度見ても発見できていなかったのだが、今日はKさんが気付いて場所を教えてくれたので、ようやく認知できた。
今はダムサイトから見下ろす位置にあるが、ダムのできる前には川沿いの道のはるか上方にあっただろう。どうやって掘ったのか、興味をそそられる。
滝畑ダムからは、石川沿いに府道218号線を下れば楽だが、皆さん足が余っているようなので(?)、関西サイクルスポーツセンターの前を通る経路を取った。一旦、ダムを見下ろす高さまで上ってから急坂を下っていくこのルートは、特に逆から辿るとツラい。
ここからは私がイベントでよく使うルートだが、天野山金剛寺の前を通過して天野街道に入る。田畑の中を辿る細道は古来女人高野天野山金剛寺への参詣路。この三叉路は西高野街道で高野山に向かう男と天野街道で天野山に向かう女が別れた辻なんです。道標の石柱には「右 あまの」「左 かうや」とあります。と、これも毎度お約束の解説。
天野街道を進むと河内長野、大阪狭山、堺の三市境が合わさる地点付近に穴地蔵がある。「目、鼻、耳など身体中の全ての穴の病気に霊験のある地蔵」とのことで、遠くからも参拝が絶えない。と、ここでもお約束の解説。
この付近からは泉北丘陵の展望もよく、娘が小学生の時分にノリクラの練習でここまで上ってきて景色を楽しんだ事もあった。あの頃は素直な良い子だったのに(涙)。
天野街道を進み続けると陶器山のダート区間になるので、ここから府道38号線を下っていく。もはや終盤だが、時間に余裕があるので櫻井神社に寄り道。
この神社は、鎌倉時代に建造された拝殿が国宝になっている。
それはそれで歴史的にスゴいことなのだが、歴史に興味のない人でも絵馬殿に導いて「上を見上げてください」というと、一様に驚く。巨大な鬼の面が飾られているのだ。下にある絵馬の大きさと比べて欲しい。
その絵馬なのだが、七五三や受験合格の内容より遥かに多いのが、嵐のファンによるコンサートチケット当選祈願。そう、メンバーの櫻井翔と苗字と同じ名称ということで、聖地になっているそうなのだ。他にもメンバーと同じ名前の神社が聖地巡礼のファンで賑わっているそうだ。今年鳥居を新調できたのは、嵐ファンのご浄財のお陰かも知れない。
スタート地点近くまで帰ってきた安心感もあって、絵馬殿に座り込んで長々と自転車談義。Kさんはサッカーをしていたとのことで、心肺能力が鍛えられていたのが健脚の理由だったのだろう。彼を更なる自転車沼に引きずり込む魔の手が伸びていたような?
結局30分以上話し込んで再出走。残ったメンバーは全員ご近所(堺市中区民)なのでスタート地点の荒山公園を素通りして北上していく。15:15、宮園交番前交差点で解散となった。
今回初参加のKさんも健脚ぶりを発揮してくれたので、予定よりかなり距離を伸ばしたにも関わらず、早く帰ってくることができた。主催者としても今日はとても楽に運営できたし、晴天のもとでベストシーズンの串柿や紅葉を楽しむことができた。
トレーニングライドも悪くないが、こんなツーリングは自転車の楽しい部分だけを凝縮したイベントだ。なかなか時間的、金銭的な余裕が持てずにいるが、またこんなイベントを実施したいものだ。
■STRAVA
2019串柿ツーリング [鍋谷峠-平-大久保-中畑-堀越観音-蔵王峠-滝畑ダム] | ライド | Strava
■本日の走行記録(自転車)
CyclemeterGPSの記録
スタート: 2019/11/16 6:53:22
自転車完了: 2019/11/16 15:44:48
バイクタイム: 4:01:03
停止時間: 4:50:14
距離: 72.06 km
平均スピード: 時速 17.94 km/h
登り: 1302 m
カロリー: 2604 kcal
平均心拍数: 125 bpm
最大心拍数: 180 bpm
平均ペダルペース: 53 rpm
最高ペダルペース: 150 rpm
今月の走行距離: 475 km
今年の走行距離: 8139 km
先月の走行距離: 908 km
昨年の走行距離: 7965 km
※当ブログに掲載したものだけでなく、多くの写真を高解像度で下記のフォトアルバムに収録しています。ご入用な方はご自由にダウンロードして下さい。なお、掲載を希望されない方は直ちに削除しますので、ご遠慮なくお知らせ下さい。
■本日のフォトアルバム
[…] Tweet Check Share on Tumblr Pocket!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var j=d.createElement("script");j.id=i;j.src="https://widgets.getpocket.com/v1/j/btn.js?v=1";var w=d.getElementById(i);d.body.appendChild(j);}}(document,"pocket-btn-js"); 体調がもうひとつだったこともあるが、先週無事に串柿ツーリングを終えて気が抜けてしまい、前もって今週のことを考えられなかった。今日はロングライドのお誘いも頂いていたが、体調と気力がすぐれずお断りしようかと思っていたら幸か不幸か中止になった。 天気は良さそうなので軽く近場を走っておくかと、近所の友人と7時に集合。私は今日もTORACLE-COZ(CARACLE-COZ試作フレーム)で、友人はシクロクロス参戦の試走を兼ねてNINERの新車で登場。 シャカリキのトレーニングをする気にはなれず、串柿ツーリングをしたばかりだが、来年の開催に備えた情報収集でまた串柿の里に向かうことにした。今日ものんびりツーリングだ。 天候は見事な青空。朝は10度まで下がるが、日中は20度を越える予報だったので、やや薄着で出走した。昨日雨が降ったので路面が濡れているところも多いが、空気は澄んで行く手の山々もくっきり見える。 父鬼集落の定点観測地点の温度計は9度を表示。山沿いはひと桁の気温で、薄着だとしばらく止まっていると冷えてくる。 製材所前の鍋谷橋から鍋谷峠に向かって本格的な上り始めるが、先週に続いのんびりペース。路面はかなり濡れていて、せっかくきれいにしたCOZがまた汚れていく。雨がそれほどでも無かったので、路面に水が流れるほどではなかった。 しばらくは友人に先行していたが、どうにも調子が上がらずペースダウン。このところアレルギー性と思われる咳喘息に悩まされており、昨晩は咳の発作で寝不足気味なせいか身体がだるくなって、上りの途中で停車して休憩。体調はもうひとつだが、澄んだ空気と林間に射す光が美しい。 しばらくして追い付きてきた友人と上りを再開し、9:30に鍋谷峠に到着。35分以上かかってしまった。先週ほどではないが、何人かの自転車乗りやランナーが上ってくる。 しばらく峠でのんびりして、少し迷ったが和歌山側に下り始めた。後で思えば体調もすぐれないのだし、ここで引き返しておくべきだったかもしれない。 下る途中からは、青空の下の紅葉混じりの山々が美しい。 南の高野山方面は、山霧が流れる見飽きない風景。空気が澄んで先週以上の美しさだ。 下を見下ろせば、串柿のオレンジが彩る平集落。 国道480号線バイパスを一気に下って道の駅くしがきの里に到達。友人が買った草餅を頂いて小休止した。ここまでにのんびりしすぎて、すでに10:20を過ぎ。後で考えれば、そろそろ引き返さなければいけない時間だったが、その時は時間の感覚が無く、先に進んでしまった。 串柿はかつらぎ町の特産物としてアピールされているが、隣接する紀の川市の山の上にも見どころがあるらしいとの情報を得ていた。国道480号線をもう少し下って紀の川市に入り、前を通過する度に気になっていた川沿いの直登の急坂を上り始めた。 この地点でもかなりの急坂で、友人は川の反対側の道路を上っていた。一時停車して片足をついて友人を撮影したところ、急坂の片足立ちでバランスを崩した。そのまま後ろ向きにひっくり返り背中、肩、後頭部と地面に打ち付けた。川の反対側の友人に心配を掛けないように、急いで起き上がって無事を伝えたが、ヘルメットを被っていた後頭部はともかく、肩と背中が痛む。これが最初のトラブル。 痛むのは痛むが軽い打ち身だけのようなので、上りを再開。これが引き返す機会だったのに、先に進んでしまった。 痛みを堪えながら上っていくと道は川沿いを離れ、さらなる急坂をグイグイ高度を上げていく。軽自動車しか通れなさそうなコンクリート舗装の細道はわずか2km足らずで標高差280mを上る超激坂。あっという間にはるか下界を見下ろす山の中腹まで上ってきた。 平均勾配は約15%だが、部分的には20%を越えていたと思われる。普通は自転車で上るような道ではない。体調が良くない上に転倒もしたが、立ちはだかる坂に闘志が湧いてしまい、気を抜くと浮く前輪や空回りする後輪を抑え込みつつ、「串柿のあるところまで」と無理をして上り続けてしまった。 友人を気遣う余裕もなく置き去りにして上り続け、ようやく串柿を発見。写真を撮るために停車してひと息つくと、少し思考力が戻ってきた。頭を冷やして考えると、随分と無理なコースを上ってきてしまった。とても友人を付き合わせるようなルートではないし、この先もどうなっているかわからない。少し歩きで引き返しつつ後ろを伺うと、友人が押し歩きで上がってくる。 「悪い悪い、引き返そうか」と声を掛けたが、友人の様子がおかしい。慣れない新車でバランスを崩し、後ブレーキを損傷してしまったとのこと。確認してみたが、その場での対処は難しそう。上ってきた激坂を、前ブレーキだけで下るのはとても無理と思えた。引き返すとなると、押して下るしかない。 友人が新車であることはわかっていたのに、無理なコースに連れてきてしまったのは完全に私の軽率。頭が冷えると、引き返すべきところで引き返さなかった自分の不始末が申し訳ない限りだった。 とにかくここから下界に降りる算段をどうするかだが、逆に先に進んでもう少しマシなルートで下る方法もある、と気付くまでもかなり時間が掛かった。とは言え、この先も急坂や荒れた路面が続くかもしれない。しばらく進むか戻るか悩んだが、考えてみればずっと一緒に行動する必要はなく、私が先行して偵察すれば良いのだ。この方法を思いつくまでにもさらに時間を費やした。冷静さを失うと、当たり前のことが考えつかなくなる。 試しに先行してみると、先にいくつかの人家があって、激坂も何箇所かあるがこれまでよりははるかにマシな傾斜と路面。700m足らずで、やや広めの下山ルートへの分岐が現れた。この程度なら乗車して下ることも可能だろう。引き返して友人にルートの状況と、「今くらいの時間で往復できる」と伝えた。 結局、引き返すよりはマシだろうと先に進むことにした。分岐までには串柿が吊るされたところもあったが、この状況では楽しめない。 分岐まで到達して下り始める。市境に沿った谷筋のこのルートは山上の集落へのメインルートだと思われるが、やはりかなりの傾斜で湿った路面に落ち葉や小枝が散乱している。友人のマシンは油圧ディスクブレーキとはいえ、前ブレーキだけでは低速でそろそろ下るしかない。2km程度と思われる下りが、とても長く思えた。 何とか国道480号線まで無事に下り、加熱した前ブレーキを気遣う。耳を澄ますと「シュー」という音が聞こえたので前ブレーキも酷使でダメージが生じたのかと心配したが、やがて音が止んだ。ローターも冷めたようなので、頑張って大阪に戻ろうと再出走。・・・した途端に、私の後輪に違和感。何のことはない、先程の「シュー」という音は私のCOZのパンクだった。 たかがパンクとは言え、立て続けのトラブルにさらに気が重くなる。下りでペースダウンすることが予想される友人には先行してもらい、チューブ交換。すでに正午目前で気も急くが、気合が入らず時間がかかってしまった。 何とか修理を終えて再出走。鍋谷峠へ向かって上り始める。晴れてポカポカした素晴らしい天気に紅葉も美しい絶好の自転車日和なのだが、トラブル続きで気分が乗らないし、打った肩や背中が痛くてダンシングがツラい。 ダラダラと上り続けて、13時過ぎにようやく鍋谷峠へ戻ってきた。どこかの団体だと思うが、たくさんの自転車乗りが峠を超えてきていた。10分ほど前に友人も鍋谷峠を越えた連絡が入っていたので、私も後を追う。 単に気分が乗らないだけでなく、どうも頭に霞がかかったようで現実感がなく、自分ながら危なっかしい。路面も濡れているところが多いので、これ以上のトラブルを起こさないようにスピードを抑えて慎重に下っていく。 友人の姿が前方に見えたので、追いつこうと少し速度を上げたら、コーナーで後輪が少しヨタついた。パンク修理をしたので気圧が低く、いつもと挙動が違うのだ。気は急くが、ここで無理するとまたトラブルを招くかもしれない。一旦停止して、曇っていたグラスを拭き取り、携行食を口にしてエネルギー補給。少しでも心身をシャッキリさせてから、速度を落としてゆっくり下っていく。 父鬼集落を通過しながら、ようやく友人に追いついた。一緒に家路についたが、私の方が疲労困憊してロクに友人のサポートもできない。ちょっとした上り坂で友人に着いていけない始末だった。 午前ライドのはずが、自宅帰着は15時近くになってしまった。振り返ってみると、立ちごけ、友人のブレーキ損傷、パンクといったトラブルは、引き際を誤らなければ発生しなかっただろう。串柿ツーリングという大仕事を終えて、今日は気が緩んでいたと思わざるを得ない。特に、来週のシクロクロスを前にブレーキを損傷させてしまった友人には本当に申し訳ないことだった。反省して出直しだ。 […]
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