四郷串柿の里偵察[鍋谷峠-平-大久保-鍋谷峠]
先週のブルベは油断による自転車損傷でDNF(完走断念)という残念な結果に終わった。振り返ってみるとトレーニング不足による後半の疲労や、出先で修理の難しい超軽量ホイールで臨んだことなど、自分の準備不足が完走できなかった理由と思える。自社商品CARACLE-COZの走行性能をアピールする機会をフイにしてしまったのは、結局自業自得だった。
ノリクラといい、競技系イベントで不甲斐ない結果が連続して、いささか落ち込んでいる。ちょっと気分を変えたいし、今年こそ「串柿ツーリング」を復活させたいので、今週末は下見に出かけることにした。台風で昨日は走れず、明日はまた降水確率が高いので、今日走るしか無い。とは言え、朝のうちは山道がまだ濡れていることが予想されるので、珍しく午後からの出走とした。台風通過直後になってしまったが、ルートに問題が発生していないか確認するためには、台風後の方がよい。
今回もTORACLE-COZ(CARACLE-COZ RB試作フレーム)で、12時過ぎに出走。まずは通い慣れた鍋谷峠に向かう。本当は蔵王峠を上りたいところだが、雨上がりの府道61号線は間違いなく路上が川になっている。
最高気温が24度というちょっと前まで考えられない涼しさの中南下していくが、行く手の和泉山脈は雲を被っている。
今日はのんびりペースなので、ついでに国道480号線旧道を通って子安阿弥陀寺に寄り道。案の定、山が近づくにつれて上空は曇り空で、涼しいと言うより寒々しい。
その後も父鬼川を挟んで国道480号線の対岸をしばらく進み、父鬼集落下で国道480号線旧道に復帰。定点観測地点の温度計は18度を表示。13時台にこの気温とは、昨日の台風で一気に季節が進んだ感がある。
今日は晴れると思っていたが、どうも寒々しくてやる気が出ない。鍋谷峠に向かって上り始めると身体は暖まってくるが、路上は予想通り、杉を中心とした落ち葉や小枝が散乱している。
これも予想通りだが、路面が濡れているところが多く、水が流れている場所もある。TORACLE-COZが汚れてしまうのが憂鬱だが、ここまで来たら上り続ける。
今日は35分以上かけてのんびり上り、鍋谷峠に到達したのは14:10頃。峠も路面が濡れている。気温が一番高い時間帯のはずだが、峠の温度計は13度を表示。身体が冷える前にアームウォーマーとニーウォーマー、ウィンドブレークベストを羽織る。
午後になっても路面が濡れている箇所が多いので、普段から杉落葉が多く鬱蒼としている三国山に向かうルートはドロドロだろう。国道480号線を和歌山側に下るのもためらいもあったが、覚悟を決めて下りはじめる。やはり湿った路面もあるが、山の南斜面で道幅の広い和歌山側は比較的乾いている箇所が多い。下る途中でも柿がそろそろ色付いてきており、下方に平の集落を見下ろす。
国道480号線旧道の大阪側はがけ崩れや大きな倒木はなかったが、和歌山側でそれなりの大きな倒木が道を横切っていた。1本は路面の半分を塞ぎ、もう1本は上空の電線に引っかかって下まで落ちていないので、乗用車なら通れる状態。これはすぐに片付けられるだろうし、現時点でも自転車の通行に支障はない。
平の集落まで降りて、大久保に向かうルートの確認をするために、東に向かう分岐に入る。目の前には、いきなり急傾斜が立ちはだかっている。
集落内には串柿を吊るす棚があちこちに設けられている。今月末ごろからこれらの棚に串柿が吊るされ、集落中がオレンジ色に染まる。晩秋を実感する絶景を紹介したくて毎年「串柿ツーリング」を主催していたが、ここ数年は仕事の都合や悪天候などでなかなか良い時期に開催できず、仲間内でこじんまりと行うのが精一杯。昨年は骨折跡のチタンボルト除去手術で、未開催に終わった。今年こそベストの時期に開催したいが、やはり仕事がらみで11月前半の開催は難しそう。11月中盤に実施できればと思っている。
台風などの災害で通行止めになることが多い山中のルートだし、主要道以外はネット上でも情報が少なく下見が欠かせない。そろそろコースも具体化したいので、早めに試走をしておきたかった。
大久保に上るルートは画像の左の道。これまでの傾斜が可愛く思える激坂だが、これすらもまだ序盤。
このルートはGoogleマップにも掲載されていないが、画像の八王子神社付近から大杉稲荷神社を結ぶ細道がある。一応全て舗装だが、軽自動車が通るのがやっとの細道だ。
八王子神社の手前で分岐を右に進むとすぐに人家は途絶え、これまでにも増して強烈な激坂が立ちはだかる。傾斜だけでなく、荒れた路面に道を横切る水切り溝、しかも今日は湿った落ち葉や小枝が散乱している。
落ち葉や小枝を踏まないように慎重にライン取りしながら、ハンドルにしがみつくように上っていく。少しでも体重を前後にずらすと後輪がスリップするか、前輪が浮く。実のところ、これまで足を着かずにクリアしたことのないルートだが、超軽量でギアレシオも低いTORACLE-COZはかなりの善戦。このまま行けるかも、と思ったところで地雷を踏んでしまった。
今日は、アケビの実があちこちに落ちていたが、避けきれずに後輪で踏んでしまったのだ。途端にツルンと後輪が空転して、はずみで激しくももをハンドルバーの先端にぶつけてしまった。何とか転倒は免れたものの、しばらく痛みに悶絶する。
すっかり戦意を喪失し、その先に落ち葉が道を覆った区間はおとなしく押して通過。こんな道だが、果樹園などが点在し、周辺住民の重要な交通路になっているのだろう。ひと山向こうに人家が見えるが、あちらも串柿の名所のひとつである中畑の集落。
大雨が降るとしばしば崩落して通行止めになるルートだが、久々に通ってみると後半が改修されて舗装し直され、道幅も広くなっていた。私の知る限り、自転車で最後まで足を着かずに上った人はいないルートだが、これなら雨上がりでなければ無着陸登頂の可能性が出てきた。もっとも、相変わらず傾斜はえげつない。よほどの達人以外は押し上げが必須なので、ロードシューズで臨んではいけないルートだ。
ようやくのことで大久保集落に到達し、定福寺で一服。まだ串柿は吊るされていないが、柿の収穫が始まっていたので、まもなくだろう。
相変わらず空はどんよりして寒々しい。時刻も15時を過ぎて、もはや夕方の風情だ。
大久保は串柿が最も多い集落だが、ここに至る舗装路は3ルートしか無い。いずれも激坂を経ないとたどり着けないため、特に自転車で訪れると秘境感が強い。鍋谷峠から三国山方面に上るルートの途中から降りてくるルートは、杉林間の鬱蒼した道で今日はパスした。
残りは、集落の反対側にある穴伏川の谷伝いに降りるルートだ。最も通行しやすいルートで、車もほとんどはここを通る。集落を抜けていくと、まだ吊り棚の準備はしておらず串柿の気配はない。あと半月もすれば、風景が一変するはずだ。
大久保以上の秘境集落である神野(アクセス舗装路は1本のみ)へ分岐を経て、谷筋を下っていく道は比較的広いとは言えかなりの激坂。慎重に下って、文蔵の滝付近に出てくれば傾斜も落ち着いた。コンバインを用いることが主流の昨今では珍しい、稲木の立つ水田が季節を感じさせる。
大久保への上りで遠望した中畑集落を経て堀越観音へ上るルートとの分岐に至り、しばし考える。堀越観音の先の蔵王峠を越えた大阪側はドロドロであることが予想されるし、最悪の場合昨日の雨で通れなくなっている可能性もゼロではない。蔵王峠から和歌山側に県道61号線を下り、北辰妙見神社前を通るルートで国道480号線に戻る手もあるが、距離が伸びるので日没までの時間が心配。
地図を見ながら数分間検討しているうちに、ふと見ると前輪がぺしゃんこ・・・パンクだ。今日は道が荒れているのでパンク自体は不思議ではないが、下る途中は違和感がなかったのに、停車してルートを検討している数分の間にぺしゃんこになった。しかも、ぺしゃんこになったチューブをチェックしてもパンク箇所が発見できない。橋のたもとだったので、水音で空気が抜ける音が聞こえづらいという理由もあったが、少なくとも数分で空気が抜けきるほどの大穴は開いていないようだ。タイヤの裏側を触っても特に棘などが刺さっている様子もない。ちょっと不思議だが、お陰で寄り道している時間は無くなった。チューブを交換して、最短距離で国道480号線に戻ることにした。
と言って、穴伏川沿いに素直に下るわけではなく、東谷バス停前の分岐を右に入っていく。
これもかなり荒れたルートではあるが、人家も点在する生活道路だ。川沿いに下るのではなく、逆に標高を上げながら平集落に至るので、アップダウンの無駄がない。反対側から下ったことしか無かったので、途中の分岐でちょっと悩んだ。それでもこのルートは地図に載っているのですぐに目星がつく。
国道480号を見下ろすこの地点を過ぎると、平集落に入る。この時点で16:15。国道480号線に戻ってもと来た道を引き返していくと、次第に薄暗くなってくる。下りで冷えるし、気合も無く、鍋谷峠への上りは汗をかかない程度ののんびりペース。
17時前に本日2回めの鍋谷峠到着。
ふと気が付いてみると、往路で道を半分塞いでいた倒木を越えた憶えがない。無意識に通過したのか、早速片付けられたのか?
ライトを点灯して少しは路面が乾いてきた大阪側を下っていく。それでも水が流れる区間は当然あり、散乱した木の葉や小枝に気をつけて慎重に下っていく。真っ暗になる前にふもとまで降りてきて、後は家路を急ぐ。珍しく真っ暗になったが、18:10には帰宅した。やはり、秋の陽は早い。
今回の試走で串柿の里へのアプローチとなる鍋谷峠(国道480号旧道)や、見どころの大久保に至る3ルートのうち2ルートに大きな問題がないことが確認できた。台風で被害がなかったことは幸いだ。できれば、近日中に三国山方面や、堀越観音方面、蔵王峠ルートの状況も確認して、コースを最終決定したい。最低限、今日のルートでも串柿(と激坂)を楽しむことはできるだろう。
■STRAVA
四郷串柿の里偵察[鍋谷峠-平-大久保-鍋谷峠] | ライド | Strava
■本日の走行記録(自転車)
CyclemeterGPSの記録
スタート: 2019/10/13 12:13:17
自転車完了: 2019/10/13 18:11:20
バイクタイム: 3:44:46
停止時間: 2:12:54
距離: 70.62 km
平均スピード: 時速 18.85 km/h
登り: 1239 m
カロリー: 2408 kcal
平均心拍数: 124 bpm
最大心拍数: 169 bpm
平均ペダルペース: 52 rpm
最高ペダルペース: 128 rpm
今月の走行距離: 640 km
今年の走行距離: 7240 km
先月の走行距離: 706 km
昨年の走行距離: 7965 km
[…] 今年は久々に復活させたいと思っている串柿ツーリング。先週も下見を行ったが、台風直後でドロドロであろう蔵王峠や三国山方面を避けたので今日はもう一度試走しようと思っていた […]
[…] Tweet Check Share on Tumblr Pocket!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var j=d.createElement("script");j.id=i;j.src="https://widgets.getpocket.com/v1/j/btn.js?v=1";var w=d.getElementById(i);d.body.appendChild(j);}}(document,"pocket-btn-js"); 和歌山県かつらぎ町は、正月飾り使われる「串柿」の特産地。11月になると串柿がすだれ状に吊るされ、山間部の集落がオレンジ色の帯で飾られる。その美しい風景を紹介したくて2011年から串柿ツーリングを開催しているが、昨年までの3年間は大腿骨骨折や、仕事が多忙だったり、天候不順でまともに開催できなかった。 久々にベストシーズンの11月半ばに開催を企図した今年の串柿ツーリングだったが、以前のように人数が集まりすぎるのを恐れて宣伝を控えめにした。それが仇になったのか、重なる行事がおおかったせいか、募集に応じてくれたのは6人と少人数。5人は知人だったが、堺在住のKさんがブログを見て参加してくれた。 7:30荒山公園集合だが、少し早めに現地入りしていると、次々参加者がやってくる。KさんはかなりカスタマイズしたTern C8で参加してくれた。私を含め6人中3台が小径車という、とても山を上るツーリングと思えない集団。他はロード1台、シクロクロス1台、シクロクロス改造ツーリング車1台と、車種はバラバラ。 自己紹介をして、7:45頃出走。すぐコンビニに寄ってお昼ごはんを調達し、まずは通い慣れたトレーニングコースを鍋谷峠に向かって南進する。 トレーニングよりはゆっくりだが、初対面のKさんもかなりの健脚で、トラブルもなく順調に進んでいく。できるだけリラックスして走れるルートに迂回したりもしたが、8:50頃には父鬼集落の南横山八幡神社に到達して小休止。 毎度のことながら、停車する度に自転車談義で盛り上がってしまう。人数が少なく、走り慣れた方ばかりなので、ここまで順調すぎるほどの進行だが、ほどほどで切り上げてもらい、再出走。 鍋谷峠にアタックする自転車乗りの多くは、製材所前の鍋谷橋からタイム計測を開始する。ここからいよいよ本格的な上りだが、一時停止するとまた自転車談義が始まる(^^;)。 話を断ち切って、9:17再出走。ここからは無理せず各自のペースで上ってください、と伝えていたが、だれも全力アタックしない。 結局、のんびり話しながら一団で上っていくことになった。普段は全力アタックなので、周囲の風景に目をやる余裕もないが、久々にのんびり上ると鍋谷峠も新鮮だ。 周囲に比べれば重量のある折りたたみ自転車のKさんはさすがに大変そうだったが、それで37分30秒ほどで鍋谷を上り切る健脚ぶりを見せた。ここでのタイムロスを心配していたが、降水確率0%の天気といい、例年になく出来すぎの進行。 峠に自転車女子3人組がいたので挨拶したら、2015年の串柿ツーリングで途中まで見送ってくれた、サクラさんだった。図々しく、我々の集合写真を撮ってもらった。 こちらは女子3人組。CARACLE-COZに興味を持ってくれたので、調子に乗って峠で折りたたみのデモンストレーション。走りはロードバイクと遜色ないし、軽いので輪行が楽ですよ、と主催者が参加者を放ったらかしでしまった。 続いて上がってきたロードバイク集団にも、以前サイクルモードライド大阪でCARACLE-COZを見たことがあるという方がいて、重量や価格に対する質問に営業トーク連発。結局、鍋谷峠に30分近く滞在してしまい、主催者が自分で自分の足を引っ張る展開(^^;)。 ようやく再出発となったが、CARACLEスタッフのIさんは、午後から用事があるのでここでお別れ。見送られて和歌山県側に下っていく。 ちょっと下ると、平の集落が見下ろせる。 遠目ながら、オレンジ色の帯が集落に立ち並んでいる姿が見える。まずは、あそこまで降ります、と下りを再開。 平の集落まで降りてきて、今度は集落内の急坂を上る。相当の急坂だが、これはまだ「並み」の激坂。 今回は時期も良かったのか、集落中に立ち並ぶ串柿は例年にも増して見事なものだった。朝の寒さも緩み、青空との対比が美しい。 「串柿は冷たく乾いた風が吹き下ろし、山霧が立ち込める当地の気候が適しており、一節には豊臣秀吉が献上された当地の干し柿を食べて病が治ったことから、推奨したとも言われている。一串に10個刺してあり、2個6個2個と間を開けてあるのは「夫婦ニコニコ(2個2個)仲睦(6つ)まじく」という語呂合わせ・・・」といった毎度の解説は、参加者のほとんどは聞き飽きていると思うが、お約束だ。 山里に 蒼天と競る 柿の朱 数年前に作った句の焼き直しだが、こんな句も頭をよぎる。 平集落でも充分なほど串柿を拝めたが、ここから最大の生産地である大久保集落に最短距離で上る激坂が今回のコースのメインディッシュ。この道はGoogleマップには掲載されていない間道で、なんとか軽自動車が通れるほどの道幅。コンクリート舗装こそされているが、著名な暗峠を越える傾斜と荒れた路面に横切る水切り溝、そして落ち葉や小枝などが行く手を遮る。下見の際にはアケビを踏んで後輪がスリップし、なんとか転倒は免れたが、ハンドル先端で太ももを強打した。私もまだ無着陸登頂は達成していない。 今回のメンバーは皆健脚で、序盤の急傾斜を乗車して上ってきた。下見の時に比べれば路面が乾いて落ち葉も少ないので、コンディションは良い。傾斜が緩み、景色が良いところで一時停車。 こんな急傾斜の途中にも人家があり、やはり串柿を干している。 その先は最近改修されたようで少し道幅が広く路面も比較的きれいなのだが、一方で終盤の傾斜は絶望的なまでに増し、まさに壁のように立ちはだかる。そんな中でも服部産業のH本さんは、自社のWilierゼロ・セッテを駆ってジリジリと上っていき、坂の上に消えていった。 続くN田さんは道幅を活かした蛇行戦術を取ったが、道を横切る水切り溝を避けきれずに、叫び声とともに停車。 私は3番手で挑むが、やはり厳しい傾斜に全身の筋肉を動員する必要がある。油断をすると前輪が浮くか後輪が空回りするので、背筋と腕力で車体を押さえつけ、パワースリップしないように足の力をコントロールする。スピードは虫が止まるほどなのに、心拍数はこの日最高の180bpm達する。それでも、下見の時より路面状況はマシなので、無事に急傾斜区間を通過した。 傾斜が緩んだところで後続を待つ。何と、C8のKさんも乗車して上ってきた。実は相当な脚力の持ち主なことが判明。傾斜が緩んでからではあるが、ピースサインをする余裕も。 今日は途中で景色を見たり、後続を待つために停車はしたが、傾斜に負けて足を付くことはなく上り切ることができた。路面コンディションさえ良ければ、COZなら無着陸登頂を達成できるメドがついた。 上り切った先は大久保集落。串柿の見どころ定福寺では、今年も串柿が迎えてくれた。11時過ぎだったが、ここで早めの昼食にした。 すっかりポカポカ陽気になり、のんびりと持参した昼食をいただく。今日は我々以外も串柿見物の観光客も多かった。串柿ツーリングを始めた2011年頃にはほとんど知られていなかったし、車でも不便な大久保まで見に来る人は少なかったと思うが、かつらぎ町のアピールもあって、年々観光客も増えている印象だ。 参加者が皆健脚だし、お陰で時間的余裕もあったので、コース変更を提案。せっかくなら同じ峠を越えて戻るより、違うルートを辿りたい。快く受け入れられた(?)ので、昼食後は蔵王峠方面に向かうことにした。 大久保集落の串柿を見物をしながら通過していく。庭や道端、屋根の上など、隙あらば串柿が干されている景観はこの季節ならでは。 とは言え、平集落と対照的に空の干し棚も多い。時期が良くないのかもしれないが、年々さびしくなっていく印象だ。立派な正月飾りを置く家も減っていると思うので、実需が減っていることも予想されるし、観光資源としては交通アクセスの良い平集落に分があるのかもしれない。3本のアクセスルートのどこを辿っても必ず激坂がある大久保集落は、苦労した甲斐がある最大の見どころだったのだが、少しその魅力が薄れている。 それでも、飾りものの串柿だけでなく、食用と思われる吊るし柿や、かごに入った干し柿なども見られたのは面白かった。 集落の外れのくるみ谷もみじ公園は、見事な紅葉。青空と周囲の緑葉との対照が美しく、しばし見惚れた。例年だと串柿ツーリングでは紅葉の盛りを過ぎていることが多いが、今年は開催時期が早く、紅葉が遅れたせいで、串柿と紅葉の両方が楽しめた。 くるみ谷の激坂を下り始めてすぐに、小径車の二人連れが上ってきた。ここまでの激坂に辟易しておられたようだが、「もう坂は終わりですよ」とお伝えした。お一人はブロンプトンで、車重とギア比的には大変だろう。 もうひとりはbenelliの電動アシスト自転車だがなぜかツラそうだったので、「バッテリーはまだ残ってるんでしょ?」と尋ねたら、急坂は前が浮いて走りづらいそうだ。ホイールベースが短く後ろ荷重なせいだろうが、アシストがあるから坂が楽というわけでもないことを知った。 我々は下っていく方だが、急坂なので充分に注意するよう声掛け。一気に文蔵の滝を通過した三叉路へ。もともとのコースだと、ここから下って再び国道480号線で鍋谷峠に向かう予定だった。予定を変更して、逆方向に上っていく。 ここもかなりの急坂区間なのだが、先ほどの規格外の激坂と比べれば可愛く思えるから不思議なものだ。当然、全員乗車して上っていく。この経路沿いの中畑集落も串柿の見どころだが、序盤は空き棚ばかり。 いささかがっかりしていたが、少し上ると例年通りの景観が現れた。ここから谷の反対側の大久保集落を見渡す風景はいつものことながら美しい。 少し先行して、参加者を撮影。急坂の苦労を忘れさせる絶景に今年も出会えた。 ひと上りして12:30前に堀越観音に到着。例年の串柿ツーリングだと大イチョウの葉が黄色くなって、ほぼ落葉していることが多いが。今年は緑葉のままだった。 ポカポカ陽気の境内でしばし休憩。ここでお会いしたクロスバイクの男性は70歳台で、和歌山市から走ってきたとのこと。私も70台でここに来る元気があるだろうか? 少しだけ上るとピークに到達。下りに備えて上着を羽織る。日なたは暖かいが、やはり日陰は寒々しい。 ひと下りすると、蔵王峠に到達。時刻は13時前。 ここでN田さんとお別れ。今日はわざわざ埼玉からお越しいただいたが、これから和歌山県側に降りて、紀の川沿いに和歌山市まで走るつもりとのこと。せっかく遠出していただいたので、関西を楽しんでいただきたいところだ。今回はキャノンデールのシクロクロス車を、ランドナー風に改造したツーリング車でご参加いただいた。こんな遊びも自転車の醍醐味だ。 我々は蔵王峠の大阪側を慎重に下っていく。府道61号線は谷筋の狭路で、晴天が二日間続いた後でも路面に水が流れている箇所が多く、自転車が汚れてしまうのが残念。近所の友人の新車を汚してしまったのは申し訳ないが、シクロクロス車なのが救い? 石畳のような区間もあり、府道61号線はなかなかの難路。私は勝手に奥河内のユイの壁と読んでいる。 滝畑ダム湖まで降りてくればひと安心。久々にダム湖の西側の遊歩道を通ったら、自転車が通過しやすいゲートが設けられていた。 自転車と歩行者を分ける白線が引かれ、自転車マークが路面に描かれ、路面も以前ほど荒れていない。良いサイクリングコースに整備されたので、今日もロードの一団が休憩していた。 滝畑ダムサイトで一時停止。下流方向の岩壁に磨崖仏が掘られているので、それを紹介。実は何度見ても発見できていなかったのだが、今日はKさんが気付いて場所を教えてくれたので、ようやく認知できた。今はダムサイトから見下ろす位置にあるが、ダムのできる前には川沿いの道のはるか上方にあっただろう。どうやって掘ったのか、興味をそそられる。 滝畑ダムからは、石川沿いに府道218号線を下れば楽だが、皆さん足が余っているようなので(?)、関西サイクルスポーツセンターの前を通る経路を取った。一旦、ダムを見下ろす高さまで上ってから急坂を下っていくこのルートは、特に逆から辿るとツラい。 ここからは私がイベントでよく使うルートだが、天野山金剛寺の前を通過して天野街道に入る。田畑の中を辿る細道は古来女人高野天野山金剛寺への参詣路。この三叉路は西高野街道で高野山に向かう男と天野街道で天野山に向かう女が別れた辻なんです。道標の石柱には「右 あまの」「左 かうや」とあります。と、これも毎度お約束の解説。 天野街道を進むと河内長野、大阪狭山、堺の三市境が合わさる地点付近に穴地蔵がある。「目、鼻、耳など身体中の全ての穴の病気に霊験のある地蔵」とのことで、遠くからも参拝が絶えない。と、ここでもお約束の解説。 この付近からは泉北丘陵の展望もよく、娘が小学生の時分にノリクラの練習でここまで上ってきて景色を楽しんだ事もあった。あの頃は素直な良い子だったのに(涙)。 天野街道を進み続けると陶器山のダート区間になるので、ここから府道38号線を下っていく。もはや終盤だが、時間に余裕があるので櫻井神社に寄り道。 この神社は、鎌倉時代に建造された拝殿が国宝になっている。 それはそれで歴史的にスゴいことなのだが、歴史に興味のない人でも絵馬殿に導いて「上を見上げてください」というと、一様に驚く。巨大な鬼の面が飾られているのだ。下にある絵馬の大きさと比べて欲しい。 その絵馬なのだが、七五三や受験合格の内容より遥かに多いのが、嵐のファンによるコンサートチケット当選祈願。そう、メンバーの櫻井翔と苗字と同じ名称ということで、聖地になっているそうなのだ。他にもメンバーと同じ名前の神社が聖地巡礼のファンで賑わっているそうだ。今年鳥居を新調できたのは、嵐ファンのお布施のお陰かも知れない。 スタート地点近くまで帰ってきた安心感もあって、絵馬殿に座り込んで長々と自転車談義。Kさんはサッカーをしていたとのことで、心肺能力が鍛えられていたのが健脚の理由だったのだろう。彼を更なる自転車沼に引きずり込む魔の手が伸びていたような? 結局30分以上話し込んで再出走。残ったメンバーは全員ご近所(堺市中区民)なのでスタート地点の荒山公園を素通りして北上していく。15:15、宮園交番前交差点で解散となった。 今回初参加のKさんも健脚ぶりを発揮してくれたので、予定よりかなり距離を伸ばしたにも関わらず、早く帰ってくることができた。主催者としても今日はとても楽に運営できたし、晴天のもとでベストシーズンの串柿や紅葉を楽しむことができた。 トレーニングライドも悪くないが、こんなツーリングは自転車の楽しい部分だけを凝縮したイベントだ。なかなか時間的、金銭的な余裕が持てずにいるが、またこんなイベントを実施したいものだ。 […]