大人の堺散走!~堺とお酒の歴史を辿る
堺 自転車のまちづくり・市民の会や、それに協力する自転車店などにより、これまでも「Sakai散走」イベントがいくつも開催されている。「散走」とは自転車のイベントではなく、自転車を使って食や体験や観光をする新しい自転車の楽しみ方と定義づけられている。
今回は錦ロイヤルの長島さんの主催する「大人の堺散走!」に参加してきた。「大人の」銘打つのは、お酒を絡めたイベントだから。
とは言え、もちろん自転車でも飲酒運転は法律違反。そこで、お酒にまつわる堺の旧跡を自転車で巡り、最後に酒造メーカーの見学(試飲)を行うイベントとなっている。使用する自転車もさかいコミュニティサイクルがベストとされ、飲酒後の乗車をしないことを条件に自車での参加も可となっていた。
となれば、CARACLE-Sの出番だ。現地までやイベント中は快適に走り、お酒が入った後は世界最小サイズに折りたたんで公共交通機関で帰宅すればよい。まさに、自転車とお酒を両立するのに最適な製品だ(?)。
出勤日だったが、これも仕事と会社を抜け出し、松原から堺まで約10kmを自走。今日は折りたたみの早いフラットハンドルの未改造試乗車を、会社から借りてきた。
集合時間の14時に堺郵便局前の歩道橋の「上」で待っていると、主催者の長島さんがCARACLE-Sでやってきた。長島さんもイベント後に輪行で帰宅するつもりで、CARACLE-Sを選択していただいた。
参加者が揃ったところで、歩道橋を降りたところにあるさかいコミュニティサイクルのサイクルポートに移動。3人は自分の自転車で、残る4人はここで自転車をレンタルした。
長島さんから見学ポイントの解説プリントを渡してもらい、今日のイベントの説明と、お互いの自己紹介。
南海高野線堺東駅の南側踏切を渡り、三国ヶ丘高校前の坂をひと登り。けやき通りに出て左折し、北進。
ひとつ目の訪問地、方違神社に到着。摂津、河内、和泉の三国境に立地するため、方位のない清地とされ、方災除けで知られている。
この境内にある巨大な「三國丘」の石碑に背面には堺とお酒に縁の深い、鳥井駒吉の句が刻まれている。
鳥井駒吉は堺の酒造業者であり、アサヒビールの源流である大阪麦酒会社を立ち上げて初代社長になった人物。方違神社の鳥居も奉納したとのこと。
鳥井駒吉と堺について、詳しくはこちらをご参照下さい↓
方違神社を見学した後は、西進して堺旧市街地に戻る。お酒とはちょっと離れるが、和菓子屋の八百源に立ち寄って、おやつを入手。
同店はシナモンを使ったお菓子の名店だが、特に肉桂餅が有名。堺に住んでいながら、実は入店するのは初めて。まずは基本の肉桂餅を購入。肉桂楽(カステラ)の試食品も頂いた。
細かいことをいうとシナモンと肉桂(ニッキ)は原料木と採取部位が異なるという話も聞くが、さて同店はセイロンニッケイとシナニッケイのどちらを使用しているのだろうか?
お次は少し南進して、開口神社にやって来た。こちらの外周に、鳥井駒吉が寄進したことを示す石碑が立っていた。一度は途絶えた堺の酒造りだが、最後(1971年)まで製造していた酒造業者、新泉酒造の石碑もあるとのこと。
その新泉酒造は戦災を被った堺の11の酒造会社が協力して起こした堺酒造が前身で、その初代社長は鳥井駒吉のお孫さんだったとのこと。
一方で、2014年に44年ぶりに堺での酒造りを復活させたのが、本日の後ほど訪問する堺泉酒造。その銘柄である「千利休」の菰樽が、社殿に奉納されていた。
境内には数多くのお社や、堺の幼稚園教育発祥の地、大阪府立泉陽高等学校発祥の地、大阪府立三国丘高等学校発祥の地といった歴史的な石碑、記念碑も立っていたが、こちらは与謝野晶子の歌碑。
与謝野晶子の生家に近いこの地に昨年建立されたばかりだが、併せて「晶子恋歌みくじ」も始まったとのこと。おみくじを結ぶためのハート型の竹ひごが、歌碑の後ろに設けてある。神社とハートという取り合わせが、ちょっと不思議な感じ。
この後は、西進して堺旧港近くの大浜公園に移動。15時を過ぎて、少し肌寒くなってきた。
大浜公園にはかつて猿山があって、見学者のやるエサで太ったメタボ猿が話題になったこともあるそうだ。
その猿山を撤去して2009年に設けられたのが現在の猿飼育舎。大阪では箕面に行けば野生(?)の猿がうようよいるが、あちらはニホンザルでこちらはアカゲザルとのこと。
実はここも堺市民でありながら、初見学。普通の無料の公園内で猿を見学できる。今回の参加者も結構食いついていた。立ち寄りスポットとしては、なかなかのものだ。
そばに案内板があったが、大浜公園にかつては水族館まであったそうだ。
この蘇鉄山は一等三角点のある山としては、日本一低い標高6.97mとのこと。
登り口にCARACLE-Sを置いて、登山開始。
奮闘数十秒にて無事に登頂を果たした。日本一高い山は誰も疑うことなく富士山なのだが、日本一低い山は定義次第で順位が入れ替わり、日本中にたくさんあるそうだ。
手近なところでは、大阪港近くの天保山(標高4.53m)も有名。こちらは二等三角点だが、三角点がある山としては一番低いとの話。仙台市の日和山(標高3m)が国土地理院が認める最も低い山だとか、自然の山なら徳島市の弁天山(標高6m)だとか、その他にも秋田県の大潟富士は、なんと標高ゼロm(^_^;)。こんな山々を巡るのも面白そうだ。
地下や海抜ゼロメートル以下の土地に人口山を作れば、しまいにはマイナスの山もできそう。
ともあれ、山頂でひと休み。八百源さんで入手した肉桂餅(ニッキ餅)をいただいた。シナモンなのに鼻につくような刺激がなく、まろやかな香りが心地よく、これは何個でも食べたくなる美味しさだ。
他の参加者も三々五々、肉桂餅や肉桂楽(カステラ)、南蛮小判(最中)などをいただいた。
おやつ後は、遭難することもなく無事の登り口の自転車のところまで下山できた。付近にあったのが、このラジオ塔。
戦前、ラジオ普及のために公共の場に設置されたものとのこと。大浜公園のラジオ等は昭和5年に設置されたもので、現存する数少ないもののひとつとのこと。街頭テレビなんてのも生まれる前の話だが、それ以前にはこんなものもあったことは知らなかった。
大浜公園を後にして、(ちょっと離れた)登山口にある神明神社へ。ここで日本一低い山の登山認定証を入手した。
この龍神堂はかつて江戸時代に善法寺境内に建立されたものが、明治維新後に廃寺になった。明治21年に名士の社交場である旭館がこの地に開館し、龍神堂はその一角に残されたとのこと。
その旭館の謂れが境内の一角にあるこの碑に記されているらしいが、漢文なのでちんぷん漢文(かんぷん)。鳥井の文字が見受けられ、鳥井駒吉が旭館と縁が深かったことは伺える。
周辺はかつて旭川があり、「あさひ」「朝日」そして旭館などの「旭」の名前がついた建物や施設が多数あったことからこの地一体が「あさひ」と呼ばれていたのだろう。すぐ近くの堅川沿いには「旭橋」の橋柱が残されていた。
アサヒビールの名前は創業者鳥井駒吉が親しんだこの地「旭」が由来だという話もあるそうだ。ふむふむ、勉強になった。
プランナー長島さんの絶妙のスケジュールコントロールで、16:15ごろに堺旧港にやって来た。
戦国期の堺の豪商、呂宋助左衛門の像の横でポーズをとる参加者たち。子供の頃に観た松本幸四郎(当時は市川染五郎)主演のNHK大河ドラマ「黄金の日日」は、印象に残っている作品のひとつだ。
今日は青空に適度に雲が浮かぶ夕陽日和とあって、灯台には何人ものカメラマンがシャッターチャンスを狙っていた。
私も宣伝写真に使えるような写真を残せるよう何枚もCARACLE-Sの写真を撮った。結構寒くなってきたので、じっくりとカメラの設定をいじる余裕はなかったが。
さて、これでようやく前座は終了。夜の帳が下りる中、ここからは大人の時間だ。
さかいコミュニティサイクルの利用者は南海本線堺駅のポートで返却し、やって来たのは千利休製造元、堺泉酒造さん。
造り酒屋らしく杉玉がぶら下がっている。酒好きはこれを見るだけでウズウズする。
前述したように2014年に復活した堺での酒造りだが、そんな報道は目にしていても正直なところあまり注目していなかったし、千利休を口にしたこともなかった。日本酒の新メーカーというと、どうも味まで新しい(浅い)印象がしてしまうのだ。
ところが今回見学させて頂いて知ったのは、新メーカーといっても社長さんは元々河内長野の天野酒蔵元西條合資会社の社長をされていた酒造りの大ベテラン。天野酒も頂くことがあるので、その意味でも俄然興味が湧いた。
17時過ぎから酒蔵見学会開始。精白度合い、並行複醗酵、三段仕込みなど、日本酒作りの説明を受けつつ施設内を見学させていただく。
こちらが今日仕込んだもろみの入った酒造タンク。上から覗かせてもらったが、すでに発酵が活発化しつつあり、ぷくぷくと泡が上がってきている。2~3日すると盛んに滞留するほど激しく発酵が進むそうだ。
昨年移転してから、大きなタンクを使えるようになったそうで、こんなタンクがいくつも並んでいる。
こちらは数週間(三週間だったか?)経過したタンク。すでに発酵は落ち着き、米の粒の形状はなくなって半透明の黄金色の液体に熟成している。まもなく原酒が出来上がる段階なのだろう。
熟成したもろみを濾過する上槽を行う機械。理科の実験でやった濾過と同じ原理で、濾過した後に酒粕が残るとのこと。
絞った原酒が出て来るタンク。この後、火入れ殺菌で発酵を止め、醸造アルコールと水を加えるのが普通の日本酒。味の調整のためのブレンドも行われる。醸造アルコールは必ずしも量を水増しするために足されるのではなく、香りを立たせて味を引き締めるために用いられる。必ずしも純米酒の方が旨いとは限らないのだ。
また、生酒とは熱処理を省いたもの(生々、本生)。ただし、生酒は厳しい温度管理が必須で日持ちしない。そのため、中間的なものとして通常2回ある加熱処理のどちらかを省いた、生貯蔵(しぼり後の加熱を省略)、生詰め(貯蔵後の加熱を省略)もある。
酒の神様である松尾神が祀られた神棚。そういえばテック・ワンに入社してすぐの頃に、CARACLE-Sで松尾大社にお参りしたことがある。
2階のこの辺りは、容器の保管エリア。一升瓶や四合瓶とともに、菰樽も置かれている。
菰樽の菰は酒の容器が陶器だった頃に輸送中の破損を防ぐための梱包材だったとのこと。
2階の一角に麹室がある。蒸米に麹をふりかけて、米麹を作る部屋だ。
中には入れないが、窓から覗かせてもらうと白布を被った容器が置かれている。中は三十数度に保たれこちらは随分温かいようだ。
夜間も交代で当番をし、麹の様子を確認しながら温度調整などを行うそうだ。
この玄米茶のようなものが種麹(もやし)。米にコウジカビを繁殖させたもので、少し動かすと粉が舞い上がるがこれはコウジカビの胞子とのこと。
台の上には3種類の千利休が並んだ。途端に場がいきなり盛り上がる。やっぱりこんなイベントに参加するのは、酒好きばかり。
まずは「千利休しぼりたて生酒」。55%精米した山田錦で仕込んだ純米吟醸酒を熱を加えずに瓶詰めしたもの。
発酵による炭酸が残り、口中を刺激するがフルーティな味わいで香り高い。ややドロッとした舌触りで重めの味だが、それも悪くない。
続いて「千利休純米吟醸」。こちらも55%精米した山田錦で仕込んだ純米吟醸酒だが、火入れ(加熱処理)と半年の熟成で落ちつきのある安定した風味とのこと。しぼりたて生酒に比べると、スッキリした味わいで軽やか。
そして「千利休純米大吟醸」。40%まで精米した山田錦で仕込んだもので、米本来の甘味とふっくらした旨味、酸と甘味のバランスが絶妙とのこと。
吟醸と大吟醸は純米の割にスッキリしていたが、私のヘボ舌では吟醸と大吟醸の2倍の価格差を理解できるところまではいかない(^_^;)。
そして、タンクからすくってきたという、まさに本当の原酒まで頂いた。これも炭酸が残りフルーティーな白ワインのようなのだが、少し酸味が強い荒削りな印象。
個人的には「しぼりたて生酒」が一番舌に合った。機会があればまた飲んでみたい。とは言え、これも常飲するには高級すぎるが。
見学料は500円だったが、高級酒の試飲におみやげ(千利休旨口300ml、酒粕)までいただき、えらくオトクな気分。すっかりファンになってしまった。
新参メーカーなのはCARACLEも同じ。良心的なものを作っても先入観で敬遠される悔しさを知っているのは、私たち自身ではなかったか? 新メーカーだからと侮っていて申し訳ない限りだと、大いに反省。
これにて「大人の堺散走!」 は一応終了。自走で帰宅する方は、試飲ができずとても残念そうだった。
参加者の大半は、終了後に堺東のとりきちで懇親会を行った。自車の私と長島さんは、CARACLE-Sを押して店まで移動。
嬉しいことに、今回ご縁のできた堺泉酒造の望月さんもお越しいただいた。
堺泉酒造さんでプレヒート(予熱)済みだし、飲み放題だし、酒好きの集まった宴席は急加熱。
数々の鶏料理も美味しく、日本酒や自転車の話題でワイワイと盛り上がった。
美味しいお酒と料理、そして楽しい話を堪能して、懇親会もお開き。
私は堺東駅からバスで輪行して帰宅した。CARACLE-Sなら旅行用スーツケースに収まるサイズなので、路線バスへの持ち込んでも周囲の迷惑になりにくく、気軽に持ち込める。「飲んだら乗るな」を実践するのも簡単な自転車だ。自転車とお酒を組み合わせた、こんなイベントもいいものだ。
■コースマップ
■本日の走行記録(自転車)
CyclemeterGPSの記録
スタート: 2017/11/12 8:16:25
自転車完了: 2017/11/12 10:55:23
バイクタイム: 0:43:14
停止時間: 1:55:39
距離: 11.92 km
平均スピード: 時速 16.54 km/h
登り: 11m
カロリー: 191cal
平均心拍数: 83 bpm
最大心拍数: 172 bpm
平均ペダルペース: rpm
最高ペダルペース: rpm
今月の走行距離: 175 km
今年の走行距離: 7505 km
先月の走行距離: 666 km
昨年の走行距離: 8860 km
■本日のフォトアルバム
※本ブログ、及び下記のフォトアルバム(フォト蔵)に掲載の画像に差し障りがありましたら、ご遠慮なくお知らせください。速やかに対処します。
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