堺に潜むターゲットを追え [GOLGO13×SAKAI 謎解きミッション]

■序章~マスコットネームはモウコ13?~

晩秋のこの街は時に霧に覆われる。少し陽が高くなれば消え去る程度で、ロンドンのような名物になりえないありふれたものでしか無い。それでも見通しの限られたこの現象は、正体を知られたくない者たちが内密の話をするのに好都合だ。

池の畔を1台の自転車が走っている。ドロップハンドルにライダーの前傾姿勢、そして時速30キロメートルを上回るスピードは快走用のロードバイクと見紛うが、タイヤの直径がロードバイクと比べてかなり小さい。よく見ると20インチ車輪を装着した折りたたみ自転車だ。

前方の赤信号に気付いて速度を落としたその自転車の後ろから、静かにもう1台の自転車が近づいた。こちらはロードバイクのようだ。後ろの自転車が追いつく前に、信号が青に変わった。途端に折りたたみ自転車はダッシュで飛び出し、先ほどを上回る速度で遠ざかる。慌てて追いかけたロードバイクだが、2台の距離は縮まらず、むしろ離れていく。

ようやく次の赤信号で折りたたみ自転車に追いついたロードバイクのライダーは、荒い息の合間にようやく声を絞り出した。

「ハアハア、待ってくれ……」
「おれに用か? おれのうしろに音も立てずに付くようなまねをするな………おれはうしろに付かれるだけでもいやなのでね……」
「許してくれ。本当にあなたなのか確かめたかったんだ。ロードバイクに負けない走行性能の折りたたみ自転車『CARACLE』を駆るトラキチの自転車乗り、あなたがモウコ13ですね?
「……話を聞こう」
「はい。堺出身の漫画家、さいとう・たかを氏を知っていますね。惜しくもこの9月に亡くなった氏の追悼イベントが、今堺市で開かれています……」
「……続けろ」
「実はそのイベントには大きな謎が隠されているというのです。地元をよく知り、自転車の機動力を活かせるあなたに、その謎を解いていただきたいのです」
「……わかった引き受けよう」
「ありがとう、モウコ13。報酬はスイス銀行に……」
「いや、報酬は主催者からもらうことにする。ただ、ひとつだけ訂正しておく」
「はい?」
「おれのナンバーは『13』でなく『3』、『猛虎参號』がおれのマスコットネームだ。代打の神様八木裕や関本健太郎、そして現在は大山悠輔が背負っている栄光の番号だ」
「は、はあ」
「そして実は……江川卓のタイガースでの背番号でもある。一度もユニフォームに袖を通すことはなかったが……」
「……」


■始まりの王墓

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午前10:15、朝の冷え込みはこの時間になっても地面近くに残り、日なたはともかく日かげに入ると自転車を駐めるわずかな時間にも寒気が忍び寄ってくる。おれは世界最大級の墳墓として知られる仁徳天皇陵(大仙陵古墳/大山古墳)に隣接した「百舌鳥古墳群ビジターセンター」にやって来た。

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情報屋コウシキ・サイトの話では、この建物に謎を解くカギのひとつがあるらしい。

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建物に入ると「Question 5」と表記された展示が目に入った。つまり、他に4つは謎が隠されているということだ。

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情報通り、施設内には謎を解く手がかりとなる書類が置かれていた。謎を解く手順や場所が示され、どうやら謎解きに用いるらしい穴の空いたカードもある。今の時点では詳しい使用方法は不明だ。

先ほどのQuestionを改めて確認したが、ヒントの通り展示コーナーに周辺の古墳群の模型展示があり、ここに記載された数字が材料になる。仁徳天皇陵の「日本最大の墳丘長=『486』m」で、「■に入る数字の合計=『84』」の2つの数列だ。だからといって簡単に答えは出ない。下の表で数字が特定の文字と置き換え可能な事はわかるが、肝心な謎解きに用いる3桁の数字の導き方が示されていないのだ。同色を探したり、いろいろ考えた末、2つの数列を加算してみると「570」。これを換算表に当てはめると、どうやら回答らしき文字列「『さかい』し」を探り当てることができたようだ。

手がかりのひとつを解くだけで、随分と時間がかかってしまった。よくある地域クイズラリーの出題レベル(地域の名物などを当てはめる簡単な謎解き)だろうと高を括っていたが、いわゆる東大クイズ王的なヒラメキが要求される。単なる知識だけでは答えを導き出せない、予想以上に高度な出題だ。たかが5つのポイントが、意外に高いハードルとして立ちはだかった。しかも、タイムリミット(イベント終了)は明日なので、もはや翌週以降に再挑戦する時間的な余裕はない。


■撤退も選択

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10:39、2つ目に訪れたスポットは、堺市立中央図書館。言わずとしれた情報の宝庫だ。仁徳天皇陵に隣接する大仙公園の一角にあり、すぐ近くだ。今回おれが用いる武器、TORACLE-S 2(CARACLE-S rev.3)ならあっという間。8.5kgの超軽量と平地に特化したフロントシングル&クロスレシオのリアスプロケット(11-25T)が、街中での迅速な移動を約束してくれる。

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遠回り150km帰省ライド [大和川-佐保川-秋篠川-鹿川-木津川-淀川-天野川]

今日は桂川、宇治川、木津川の合流する八幡市の背割堤でスポーツ系サイクル試乗会が開催されるので、見学に行くことにした。この機会に、なかなか顔を出せていない実家にも立ち寄ることにした。

TORACLE-COZ(CARACLE-COZ DB)で6:43出走。距離があるのでできるだけ早く出走するつもりだったが、寒さ対策に手間取り少し出遅れた。9:30から試乗開始なので距離の短い淀川沿いに遡ることも考えていたが、どうせ帰路は市街地走行になる。せめて往路は快適に走りたいので、自転車道を繋いで奈良盆地経由で現地に向かうことにした。

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決断するまで進路が定まらず、効率の悪い遠回りのルートになってしまったが、大和川の堤防に上ると、雲のほとんど無い青空で、朝日が川面に反射して美しい。ただし、平地にも関わらずかなり寒い。

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自転車道のない区間は、できるだけ交通量の少ないルートを選んだ。大和川の北側(右岸)を進み、河内堅上駅方面に抜ける細道を通っていると、先ほど高架で超えたJR大和路線(関西本線)の上下線列車が横ですれ違った。

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河内堅上駅前を過ぎて、踏切待ち。奈良盆地から大阪平野に大和川が下るこの区間は、道路2本(左岸の国道25号線と右岸市道)と線路が川沿いの狭い平坦路を取り合いするように何度も交差しながら進んでいく。

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亀の瀬地すべり地区-峠八幡と先々週の信貴山サイクルロゲイニングでも通ったルートを逆走し、奈良盆地に入る。三郷から新王寺駅の手前で南側(左岸)に渡って、流れの穏やかになった大和川沿いをさらに遡っていく。距離ば国道25号線などを辿ったほうが短縮できるが、今回は遠回りでも自転車が気持ちよく走れる川沿いルートを進んだ。

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法隆寺IC付近の御幸橋で再び北側(右岸)に渡り、そのまま堤防上を進む。大和郡山市に入ると大和川の支流の佐保川に分岐し、堤防上をそのまま進むと京奈和自転車道に入る。御幸橋を渡ったところで富雄川沿いの奈良自転車道を進む方法もあったが、最近、京都・奈良・和歌山を繋いだこの自転車道が全通したと報じられていることもあり、未走のこの区間を見てみたかった。またちょっと遠回りルート。

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雨の串柿の里 [紀見峠-蔵王峠-堀越-大久保-鍋谷峠]

恒例にしている串柿ツーリングだが、昨年はコロナ禍と鍋谷峠の通行止めで断念した。今年も11月にイベントや仕事が続いたため準備が不充分で、参加者募集は見送り、少人数の身内だけで本日開催することになった。

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まずはTORACLE-COZ(CARACLE-COZ DB)で6:33出走し、集合地まで自走。昨日は本格的な雨となり、寒冷前線通過後は一気に冷え込んだ。大阪の平地ですら最低気温がひと桁になる予報にウェアは厳冬期装備。天野街道を走っていると、朝日が雲の間から顔を出して美しい。やや雲は多いのが気がかりだが、降水確率は10%だった。

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集合時間の8時まで余裕があったので途中からペースダウンしたが、それでも7:40には集合地の道の駅奥河内くろまろの郷に到着。時間つぶし時に、今さらながら名前の由来となった高向玄理(たかむこのくろまろ)公顕彰碑の説明を読む。遣隋使として中国に赴き、帰国後は国博士に任じられて大化の改新後の政権のブレーンとして活躍したとのこと。

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8時過ぎに写真を取って出走。今日は先日の信貴山サイクルロゲイニングを一緒に走ったチームCARACLEメンバー3人と、業界の大先輩H本さんが参加してくれた。

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昨日しっかりと雨が降ったのでドロドロになっていることが確実な蔵王峠の大阪側を上るのは諦め、まずは紀見峠を目指す。山麓の新興住宅街と古い集落を繋いでジグザグと進んでいく。気心知れたメンバーなので、初めてのルートを近道したら、ダートのあぜ道で家の庭みたいなところを通過することになった。お騒がせしてゴメンナサイ。

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暫定ワン・ツーフィニッシュからの急転直下 [信貴山サイクルロゲイニング2021]

昨年は同僚I井さんとその友人O川さんが組んで、初参加ながら7位に入った信貴山サイクルロゲイニング。今年は私と技能実習生のライアンが加わって、CARACLE発売元テック・ワン関係者4人で挑むことになった。私自身は初参加なのでいきなり上位が狙えるとも思っていなかったが、事前に昨年のチェックポイントの一部を回るチーム練習をしたり、今年のチェックポイントになりそうな場所を予想したりと、出場する限りは本気で準備に取り組んだ。

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I井さんと参加したブルベ200km以降も長距離や山岳ライドが続き、個人的にはかなり脚力も回復してきたので悪くないペースで回れるだろう。スタート地点までのアプローチでも朝日が清々しく、意欲満々で乗り込んだ。

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7:30過ぎには、八尾空港に隣接する集合地の大阪府中部広域防災拠点にチームメンバー勢揃い。私とI井さんがCARACLE-COZ DB(ディスクブレーキ)で、ライアンとO川さんはCOZ RB(リムブレーキ)。O川さんは世界に1台しかないメタリックグリーンの塗装試作フレームを活用したデュラエースDi2モデル。

メカトラなどのトラブル発生時に分離できるように2人ずつでチーム分けし、I井さんとライアン、O川さんと私で組んでいるが、基本的には4人組で行動する。

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7:45から受付開始。今年のマップを受け取って、早速作戦会議。山上や遠隔地のポイントは得点が高いらしいが、競技中は実際の得点は発表されないので、予想で行動を決めるしか無い。昨年の50ポイントと比べて今年は30+2(ボーナスポイント)とチェックポイントが少ないこともあり、全部回る勢いで検討を始めたが、数が減った分かなりのアップダウンを強いられる難易度の高いポイントがいくつかある。スタートまでの限られた時間で、昨年の経験者2名の意見や、各々の土地勘を活かして大まかなプランをまとめた。

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トイレに行った際に会場を見下ろすとかなりの人数だ。昨年は時節柄DNS(出走断念)もあり、67チーム190人の出場だったが、今年は全102チーム279人の出場となり、欠席者もゼロとのこと。我々の「一般6時間の部」だけでも64チームが出場する。この時点で昨年よりかなり上位進出が難しくなった。

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開会式に続いていよいよ9時からスタート・・・なのだが、密にならないように少しずつスタートするので、走り出すまでに4分ほど掛かった。後になってみれば、この4分さえ馬鹿にならない展開になったので、出口に遠いところに位置していたことが悔やまれる。

各ポイント間の詳細コース選定は主に私が請け負い、4人の先頭で出走。ゴールに近いポイントは調整用に後回しにするのがセオリーだが、市街地を交通量の少ない朝のうちに回ってしまおうと北上していく。


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TORACLE-Sが「自転車日和」vol.60掲載

雑誌「自転車日和」vol.60(2021/11/05発売)の特集『かぶらない自転車選び』に私のTORACLE-Sが掲載された。

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これまでも辰巳出版さんには自転車日和やムック本に度々掲載してもらっているが、今回は「折りたたみ自転車&スモールバイクCUSTOM 2021」以来の掲載。

jb60a
facebook等で「かぶらない自転車」を募集しているのを知り、これまでの愛車の中でも最も独自性の強いTORACLE-S(CARACLE-S 2016 試作車)を応募した。画像は乗鞍山上畳平から北アルプスをバックに撮影した、全日本マウンテンサイクリング(現 乗鞍ヒルクライム)2016ゴール後のもの。

世界最小を謳う20インチ折りたたみ自転車を、ヒルクライム仕様にカスタマイズしただけでもかなり特異だ。加えて、塗装試作フレームをベースにしてタイガースをイメージした黄色と黒のカラーリングに応援旗まで装着した悪趣味な仕様は、他の誰もマネをしようと思わない(笑)。

文中にあるように、こいつのお陰でノリクラで90分の壁を破り、スズカエンデューロではチームで優勝ソロで7位に入った。残念ながら事故により代替わりさせたが、私が最も競技に打ち込んだ時期を支えた相棒を忘れることはない。

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