坂で今 汗が下しる 葉月かな [暗峠-榁木峠-斑鳩]
同行者を募って暗(くらがり)峠ライドを予定していた8/14は、大阪や京都で浸水や道路の通行止め、鉄道も止まるという大豪雨。前回の激坂トレライドといい、いくら雨男の私が主催するからといって、雨の確率が高すぎる(^_^;)。
順延して翌日8/15開催としたが、順延のために参加できなくなった方もおり、申し訳ないことになった。
仕切り直しの8/15。集合地のJR住道駅に向けて、堺の自宅を6時前に出走。今日も雨の可能性は残り、空は雲が多くどんよりとしている。今日上る暗峠は、アンテナの立ち並ぶ生駒山頂の右側の窪みだ。
途中で渡った大和川はさほどの水量ではなく、昨日の水も一段落したようだ。
7:25頃、JR住道駅に到着。集合時間の7:45まではまだ時間があるが、すでに自転車処ぽたりんぐぅの當眞店長が愛用の小径車を携えて待っていた。仕事を通じてお世話になっている當眞さんだが、今日は参加者として同行してくれた。
滋賀から輪行してきてくれたみわっちさんとメロー=イエローさんも、別の場所で自転車を組み上げていた。
もう一人、日程がずれたお陰で参加できるようになったnorikura1059さんもこちらに向かっているが、集合時間に間に合わないので先に出発することにした。集合写真を撮って、予定通り8:00に出走。
まずは恩智川に沿って南下する。恩智川も水は引いているが、最近大量の水が流れた痕跡がある。
暗峠前の観光。石切神社に立ち寄る。朝から人出が多く、お百度を踏んでいる人が何人も。
普段は寺社に立ち寄っても「家内安全」を祈願するのみだが、今日は「暗峠を無事に上れますように」というお願いも加えた。
事前に散々脅したので、メロー=イエローさんは押し歩き用のスニーカーまで持参していた。とは言え、ご本人は半分ネタのつもりだったらしいが・・・。
石切神社の本殿から、上之宮へと続く参道は乗って上れる「普通」の急坂(これから異常な急坂に行くので・・・)。土産物屋だけでなく、七福神、不動、大仏と神仏ごっちゃ混ぜの、ありがたそうなものが次々現れる。
近鉄を越え商店が途切れると石切神社上之宮が見えてくる。
上之宮は本殿に比べると人が少ない。歩いても結構ハードな坂道だし、多くの人は参道を上之宮へのお参りのためでなく、近鉄に乗り降りするために利用しているのかもしれない。
norikura1059さんが住道駅に着いたとの連絡が入り、追いつくまでの時間つぶしにさらに奥にある摂社、末社等を徒歩で散策。
願いが叶った御礼に生きている亀を奉納する「御礼池」は本殿にもあったが、こちらは焼き物の亀を納めているようだ。生きた亀は見当たらなかったが、巨大な鯉が豪快に跳ね、ビックリさせられた。周辺を一巡りして上之宮に戻り、急がずのんびり再出発。
R308に向かって横滑りしていくと、大阪平野を見下ろす絶景が現れた。しかしこの道は相当の急坂。水平になっている住宅の壁や縁石との角度を見て欲しい。景色はいいだろうが、住むのはかなり苦労するだろう。
あまりの急坂にメロー=イエローさんは半分(?)ネタ作りのためとは言え、スニーカーで押して下っていく。
近鉄沿いまで降りてくれば、傾斜は一段落。額田駅を過ぎてR308に出てくれば、ここが国道では日本一の急坂として知られる暗峠の大阪側入り口。
いきなりリング上の滑り止めがつけられたコンクリ舗装が待ち構えている。
ここでしばしの待機の後、norikura1059さんと合流。彼はわざわざ東京からの参加。順延により急遽参加できることになったので、移動手段も急遽手配。
最初は夜行快速ムーライトながらを利用するつもりだったが満席。夜行バスのチケットまで買って乗り込もうとしたら自転車積載を断られ、結局羽田空港で一夜を明かして朝一番の飛行機で駆けつけてくれた。いやはや全く、ありがたい話だ。
挑戦開始前に、簡単に暗峠の解説をしておこう。国道308号線の大阪府と奈良県の境、暗峠は標高こそ455mと大したことはないが、特に大阪側の勾配は近鉄奈良線との交差地点からわずか2.5kmで標高差400m以上を駆け上がり、平均勾配17.5%。終盤の緩傾斜を除いた1.5kmは、平均勾配20%という規格外の激坂。
さらに、最も傾斜の厳しい中盤のヘアピンカーブにはイン側37%という「壁」が待ち構え、国土交通省により国道で日本一の傾斜と認定されているとのこと(画像は昨年奈良側から上った際のもの)。傾斜だけではなく、狭い道幅と、意外に多い通行車両、木々に覆われ湿りがち(滑りやすい)の路面もあって、なまじの自転車乗りの挑戦をはね退ける、近くて遠い峠だ。
私自身は過去何度も上っているが、ほとんどは傾斜の緩い奈良側からのもの。大阪側からも数回挑戦したが、未だ足をつかずにクリアしたことがない。腰痛を患った2007年以降は完全に挑戦を諦めていたので、5年以上開いた久々の挑戦だ。
さあ、いよいよというところで、数人の少年たちが坂を降りてきた。ズノウのレーサーに乗った一人が、人懐こく話しかけてきて、聞いてみると埼玉県春日部市から仲間たちと(国道)1号を走ってきたとのこと。
噂に聞く伝説の坂に挑戦して、案の定厳しい道程だったようだが、目をキラキラさせて実に楽しげ。クラシックな装備や奇抜な格好に違和感もあるが、全力で自転車を楽しんでいる様子に心が暖かくなった。彼はこれから何十年も自転車に乗っていくに違いない。
仕切り直してアタック開始。序盤から住宅の間を抜けて行く、かなりの急坂が立ちふさがる。初挑戦の仲間たちからは、「ホントかよー」なんて声も聞こえてくるが、まだまだほんの序の口ですよ~( ̄ー ̄)ニヤリ。
この辺りはまだ路面も乾いているし、砂やコケもない。車が来ても、一時避難できる駐車場や広場も多い。とは言え、ロードバイクのギア比ではツライ傾斜に、初挑戦の仲間たちは次第に足をついて止まり、後ろに見えなくなっていった。
残るは前26×後24Tという反則ギアをつけた私と、ノリクラで入賞したこともある剛脚のnorikura1059さんが足をつかずに上り続ける。彼は3年前にもこの坂に挑んでいるが、インナー39Tのノーマルクランクではさすがに太刀打ちできなかったとのこと。今回は34Tのコンパクトクランクで再挑戦だが、それでもリアコグは25T(だったかな?)と最軽と言うわけではない。
枚岡公園内に入ってくると、傾斜がさらに増し、しかも路肩は湿って滑りやすい。考えなしにダンシング(立ち漕ぎ)すれば後輪がスリップし、シッティングだと今度は前輪が浮いてウィリーしてしまう。前回挑戦した時には、限界まで頑張った挙句、ウィリーしてそのまま後ろにひっくり返り、ゴロゴロと坂を転げ落ちた。ヘルメットが初めて役立ったのが、ここの上りだったという凄まじい傾斜だ。
過去の教訓を活かし、前後輪への重量配分を慎重に調整しながら、必死で上り続けるがこれはかなり苦しい。もはや片手を離して撮影する余裕はないし、スマホやサイコンに目をやる隙さえなくなってくる。足つき無しでのクリアを目標にしているだけに、車が来ると本当に厳しい。細道で足をつかずにすれ違うのは至難の業だし、例え足をついて車をやり過ごしても再度走りだすのは、これまた至難の業。幸い、交通量はまだ少なく、車が来た時に一時退避できる駐車場がたまたまあったりで、何とか足をつかずにやり過ごす。
枚岡公園を抜けても厳しい傾斜は続き、時折り排水用の溝が横切る荒れた路面に何度もヒヤッとさせられたが、何とか転倒せずに上り続けた。リアコグに27Tを入れてないことや、3時間しか寝ていないハンデが堪えたか、norikura1059さんの姿も後ろに見えなくなった。これまでにないほど汗が吹き出し、激坂に落ちていく。息も心臓も苦しい。もう諦めて足をつこうか、というところで前述の日本一の傾斜のヘアピンカーブが現れた。
とにかくこのヘアピンに挑戦してから、と思い直し、覚悟を決めて突入! したが、アウト側に張り付くようなラインを取ったら、意外に楽にクリアできた。37%はイン側の傾斜なので、アウト側はこれまで上ってきた傾斜と比べればさほどでもなかったようだ。
このヘアピンの上にも急傾斜は続くが、一時退避できる脇道を見つけ、しばしグルグル回りながら休憩。ここまできたら、何としても足をつかずに上り切ってやる。
息が落ち着いたところで、残る急坂を上り、傾斜がやや緩くなったのが湧水「弘法の水」の近辺。ようやく再びカメラを取り出す余裕が出た。ここまで来れば終盤だ。
その後も断続的に急坂は出現するが、短く、傾斜もそれほどではない。やがて、ポカッと空が開け、集落や田んぼが広がる緩傾斜になる。
最後は石畳が現れ、暗峠の道標が出迎えてくれる。ついに無着陸登頂を達成! MTB並みのギア比と、途中の駐車場や脇道での一時退避がなければ絶対に達成できなかった反則気味の記録ではあるが、ともかく初めて足つき無しで大阪側から上ることができた。
今年は体調が悪く、不甲斐ないトレーニングが続いていたが、ノリクラ直前になってちょっとしたお土産をもらった気分だ。こんなキツすぎる急傾斜を上っても、ノリクラのトレーニングにはならないかもしれないが、それでも登坂の目標のひとつを達成したことは素直にうれしい。
停車して自転車を降りると、頭がクラクラする。上っている最中は心拍数をチェックすることも難しかったが、何度かのチラ見で180を超える数値が表示されていたので、今までにない厳しい負荷が身体にかかっていたのだろう。しばらくへたり込んで、休憩。
少し回復した頃にnorikura1059さんも到着。残念ながら足つきなしとはいかなかったようだが、高ギア比のロードバイクと寝不足では厳しかったのだろう。
と、その向こうに傾いた車が・・・。へたり込んでいて気が付かなかったが、脱輪だ。私は腰が悪いし、疲労困憊しているところではあるが、猫の手にくらいにはなればと駆けつけた。通行できなくなった対向車や後続車のドライバーをはじめ、通りすがりのハイカー、トレイルランナー、近所の住人まで、結構な人数が集まった。まだまだ人情は捨てたものじゃない。
やがて、残る仲間も3人も上がってきて、こちらも疲れているところだろうが、協力。その甲斐もあってか、脱輪車は無事に道路に復帰した。幸か不幸か、この脱輪のおかげで対向車が途切れて、後続の仲間たちは走り(押し?)やすかったかもしれない。
ひと仕事終え、後続の仲間たちはあらためて暗峠へ。峠の茶屋すえひろさんでかき氷などの冷たいものを頂いて大休止。
初挑戦の方々の共通した暗峠の感想は「予想以上」とのこと。そう、この峠の凄さを語っている人やブログは数あれど、写真や言葉には限界があり、実際に走ると想像をはるかに上回る凄まじさなんです。一度走ったこの方々も、当分この峠をネタにできるでしょう。
當眞さんは、かなり大変だったとのこと。一般的に上りに関しては決して不利ではない小径車だが、あれだけの急傾斜ではホイールベースが短い分、前後輪の体重配分がよりシビアになるらしい。 ポジションの自由度の少ないブルホーンバーも、この上りでは不利になったそうだ。荒れた路面も小径車には過酷だっただろう。
このすえひろさんには、自転車乗り向けのノートもあり、プロロードレーサーの辻貴光さんのサインも飾ってあった。
奈良側は大阪側よりマシな傾斜とはいえ、特に序盤はかなりの傾斜。その後も時折りコンクリ舗装が現れる。
振り返ると、山の上にはちょっと怪しげな雲が流れている。ちょっと不安。
南生駒駅前付近まで下り、そのままR308を進んで、今度は榁木峠への峠道。まずは住宅街の中を上って行く細い急坂を越え、一度下って大瀬中学の横で太い道路に出る。
続いて本格的な上り道。2車線で常識的な傾斜(乗って上れる)坂道が続くが、最後に細道になって短いが強烈な壁坂が現れる。前回クリアしていたが、今回は雨上がりのせいか、どんなに前後輪の体重配分を調整しても後輪がスリップして上れない。皆、押し上げたが、norikura1059さんだけは、乗ったままクリア(驚)。
後で聞くと、「体幹を鍛えること」だそうだ。前後左右のバランスと、引き足も活用したペダリングでトルクを一定に保ち、スリップを防ぐとのこと。「じゃあ、バランスボールが良いんじゃ?」と聞いたが、結局のところ自転車で坂を上るのが一番だそうです、ハイ。
ともかくも本日二本目にして、最後のまともな峠に到着。榁木峠も相当の急傾斜だが、暗峠の後では難易度は可愛いもの。
ただ、暗峠で消耗した後なので、楽勝と言うわけではなかった。
下りも国道でありながらわかりにくい細道で、時々停止しながら砂茶屋付近までたどり着いた。富雄川を渡る橋で、みわっちさんの自転車に異変発生。
パンクだ(^O^)。このところ、私の専売特許だった集団走行時のパンク連発はみわっちさんに引き継ぎ、私は平穏な日々が続いている。
プロフェッショナルの當眞さんにも手を貸して頂き、メロー=イエローさんはCO2カートリッジを提供。皆の協力でパンク修理は手早く完了。ただ、みわっちさんの前ブレーキの固定ネジが緩んでおり、左右クリアランスのアジャストネジも脱落していたことが判明。パンクが幸いしたかもしれない。
ブレーキシューを新調したばかりとのことだったが、かなり音鳴りしていたので、その振動が悪影響を与えたのかもしれない。當眞さんが調整して、音鳴りはほぼ解消。シュー交換の際は、硬化部分を除くために、シュー表面を薄く削ることを勧めておられた。
その間、私は手伝いもせずに、iPhoneで昼食場所を探していた。再出発して、当たりをつけたすぐそばのつけ麺屋に行ってみたが、かなりの行列なので、断念。しばらく富雄川沿いに下って、すしや勘太郎に入ったのは13時近くになった。
暑さのせいか、全員が冷やしうどん定食を注文。雲が多いのが幸いだが、今日はとにかく蒸す。まあ、大阪在住の者にとっては、毎度のことではあるが。冷水にお茶までお代わりして、水分補給。
遅めの昼食後はさらに富雄川沿いに下る。空には青い部分が増えてきた。雨が降らないのは良いが、やはり暑い。
途中からはサイクリングロードに入り、河川敷を走る箇所もあったが、どうやら昨日は冠水していたらしく土砂やゴミが散乱している場所もあった。
慈光院の見えたところで右折して富雄川を離れ、県道9号線を斑鳩方面へ。低い丘を2つほど超えると、道端に法起寺。
さすがに世界最古の木造建築というだけあって、入場料は結構高い。
時間的な問題もあって、今回は本堂や五重塔がある中心部は外から伺うだけにした。
近くにある藤ノ木古墳。10年近く前に訪れたときはまだ発掘調査中だったが、すっかり整備されていた。
後は、大和川沿いに下っていくだけ。土手上を走る遊歩道を経由してR25を下って、ゴールの高井田駅に15:30頃到着。
幸い、雨は降ることなく工程を終えることができた。
おつかれさま~、と今日を振り返る。メロー=イエローさんが、あらためて榁木峠の乗車登頂についてnorikura1059さんに質問し、体幹強化トレーニング方法のミニ講習会。山梨でトレーニング中に出会った今中大介さんに教わったのが、DHバーを握るような体勢でハンドルから手を離して上る方法だそうだ。
そう簡単に手放しで坂は上れないだろうが、ちょっと試してみますか・・・。その他にもアップダウンを繰り返す道でのインターバルトレーニング等々、今中大介直伝を色々レクチャーしてくれた。
輪行で滋賀に戻るみわっちさんとメロー=イエローさんと、近くにデポしている車で帰宅する當眞さんとは、ここでお別れ。當眞さんは、今晩のフェリーに乗って四国に渡り、明日はしまなみ海道を走るとのこと。いやはや、大変だ。
そしてnorikura1059さんは、これから友人のいる京都まで走っていくとのこと。こりゃまた、スゴイ体力。彼をR170バイパスまで案内して、志紀駅付近でお別れ。norikura1059さんとみわっちさんには再来週のノリクラでまた再会することになる。
先の長いnorikura1059さんの足手まといにならないように、ちょっと飛ばしてみたら、身体のあちこちの筋肉がだるく、かなり疲れていることに気づいた。
今日の後半は平地ののんびり走行だったので気がついていなかったが、暗峠の激坂上りは普段使わない筋肉を酷使していたのだろう。これが良いトレーニングだったのか無駄な努力だったのかは、再来週のノリクラ本番の結果でわかるだろう。
半ばヤケクソ気味のムチャトレだったが、無着陸登頂を果たしたことで気分よくノリクラに望めそうだ。もっとも、本当に苦しかったので、これからもちょくちょく行きたいという気分にはなれない。とにかく、一瞬でも気を抜くと転倒に繋がるという急傾斜が、かなりの区間続くのだから。今回は同行者がいたことでモチベーションが上がっていたし、車が少なかったことなどの幸運に恵まれた偶然かもしれない。
参加者の方々は、あまりに過酷なルートにうんざりしたかもしれませんが、次はもうちょっと楽なルートを考えるので、懲りずにまたお付き合いいただけるようお願いします。
そうそう、暗峠登頂の願いを聞き届けてくれた石切神社に御礼をしなきゃ。
■コースマップ
■本日の走行記録(自転車)
Cyclemeterの記録
スタート: 2012/08/15 5:56:27
完了: 2012/08/15 17:20:52
バイクタイム: 4:59:43
停止時間: 6:24:38
距離: 95.17 km
平均スピード: 時速 19.05 km
最高スピード: 時速 75.04 km
登り: 2454 メートル
カロリー: 2415 kcal
POLAR CS200CADの記録
走行距離: 92.9km
消費カロリー:3852cal
計測時間:11:24:17
平均心拍数:111
最大心拍数:185
平均速度:17.1km/h
最高速度:42.5km/h
平均ケイデンス: 78
最大ケイデンス:118
心拍数ターゲットゾーン:130-152
ターゲットゾーン以下時間:9:44:00
ターゲットゾーン内時間:0:59:27
ターゲットゾーン以上時間:0:40:50
走行時間:5:24:49
累計走行距離:4556.1km(2010年12月10日より)
■本日のフォトアルバム