CARACLE-S Di2搭載など [TRACLE-S 2→4代目CARACLE-Sへの変遷]
長らく記事にしないままだったが、TORACLE-COZ2(CARACLE-COZ DB)ばかりでなく、CARACLE-S(TORACLE-S2→4代目CARACLE-S)もカスタマイズを重ねていた。
しばしばプレッシャーアンカーのズレに悩まされていたので、HIRAMEのアンカー(画像右)にカーボン用滑り止め剤を塗布してみたりしたが、ズレを根絶するには至らなかった。そこで重量増にはなるが、ロングサイズのプレッシャーアンカーを導入してみることにした。
ところが、CARACLE-Sのヘッドチューブはかなり短いので、フォークコラムも短い。使用中のカーボンフォークもここまで短くカットした状態でロングサイズアンカーを挿入することを想定しておらず、コラムパイプの内側の底部付近にはバリや製造時に内圧をかけるためのバルーンが残っている。
アンカーが正常にセットできないので、ラジオペンチでバルーンをねじ切ったり、リーマーを掛けたりヤスリで削ったり、かなり苦労してロングサイズアンカーをセットした。これで若干は改善したが、やはり時々ズレは発生する。コラム内面を完全に同径に仕上げることは難しく、いくらロングアンカーでも結局は内径の細いアンカーの先端付近にしかテンションが掛かっていないことが伺え、せっかくの長さを活かしきれなかったようだ。
そこで次に導入したのが前職で輸入に関わったFIRST DGダブルロックヘッドセット。上ワンにロック機構があり、通常の自転車ではアヘッドステム(CARACLE-Sの場合はハンドルポスト)と合わせて2重にフォークコラムを固定してヘッドの緩みを防ぐ仕組みだ。
スタックハイトが高いのでこれまでのフォークではコラム長が足らず、新しいフォークに交換。そこまでやっても結局ズレの根絶には至らず、数ヶ月に1回程度再固定を繰り返す状況が続いた。かなり頻度は減ったが、掛けられるトルクに限界があり、しかもたわみやすいカーボンコラムに、プレッシャープラグでは必要な固定力が得られないと認識した。一部ロードバイクブランドでは、コラム内にナットを接着して完全に固定してしまう例もあり、CARACLE-Sに限らない問題のようだ。
そんな私の経験もあって、CARACLE-Sのドロップハンドルモデル451RSの製品化にあたっては、市販フォークの採用を諦めた。コストアップになってしまったが、フォークのコラムにナットを埋め込み、大径プラグで固定する専用カーボンフォークを導入することになった。私自身も2023年秋に入荷した451RS専用フォークを装着。以降はピタッと緩みが止まった。長年苦労していたが、やっと解決に至った。
話は前後するが、TORACLE-S2(CARACLE-S rev.3世代)のフレームは、2023年1月に旧世代フレームの耐久性検証のために供出した。私はモノへの思い入れ(執着?)が強く、自転車も「乗れなくなる(壊れる)まで乗る」主義。強度試験のためにフレームが破壊されるのは残念だったが、これもユーザーの安全性を確保するための重要な検証なので是非もない。
代わりに現行フレームを供与されることになったが、現行品にブラックは無い。そこで、どうせなら最新カラー、ということで2023年春新発売のココアを選んだ。2023年1月12日に同僚にフレームを交換してもらい、ひとまずパーツ構成はそのままで通勤や街乗りに使用を開始した。虎カラーでなくなったので、TORACLEではなく「4th CARACLE-S」と呼んでいる。画像は2023年2月12日のものだが、この時点ではまだフォークも市販品だ。
実はCOZから外したデュラエースR9100の搭載を以前から考えていたが、すでに8.51kgまで重量を落とし、充分によく走る仕様。忙しい中で、緊急性が無いカスタマイズをずるずる先送りしていたが、フレーム交換を機会に検討を進めた。CARACLE-SにDi2を搭載する上で一番の問題は、バッテリーをどこに収めるかだ。折りたたみ時にシートポストが大きく上下する構造上、シートポストに収納するのはかなり難しい。内蔵バッテリーをボトル台座に外装できるケースもあるが、できればどこかに内蔵したい。
脳内と実物のシミュレーションを繰り返し、最終的にハンドルポストの上部パイプにバッテリーを内蔵することにした。とはいえ、エレクトリックケーブルをどこから引き出すかが問題。ハンドルポストのどこかに穴を開けることも考えたが、いっそのこと再度ステム装着してハンドルを前に出し、コラム直上から引き出すことにした。
ハンドルポストの上パイプにステムを咥えさせるカスタマイズは初代CARACLE-SやTORACLE-Sでも行っていたが、現行のCSテレスコピックハンドルポスト2はパイプ形状が異なる。ハンドル方向を一定に保つための切り欠きが設けられているので、穴埋めのパーツを作ることにした。まず、カーボンフォークのコラムパイプをカットした余りを縦に切る。
切ったパイプの切れ端をサンドペーパー(ベルトサンダー)で削って平面出しとサイズ出しを行う。
これをハンドポスト上部パイプに設けられた切り欠きにあてがい、真円に近づけてからステムを装着する。少しでも軽くするためにカーボンパイプを使ったが、機能的にはもちろんアルミでも問題はない。ステムの内側が支えられれば良いので、機能的にはこんな凝ったことをする必要は無いとは思う。ステムのコラム固定ボルトの位置に穴を開けて適当なサイズのボルトをねじ込むだけでも充分だろうが、自己満足の世界だ。
穴埋めパーツのサイズに問題なさそうなので、ハンドルポスト上部パイプのハンドルクランプ部分を切り落とす。切断面はスムーズに仕上げて黒く塗装しておいた。
バッテリーの収納イメージはこんな感じ。実際には下から挿入して固定したが、ステムを装着してパイプ直上を開けたので、そこからケーブルが出せる。オフセット10mmのスズカリミテッド用ステムでもそれほど不自由はなかったので、突出し長35mmと短く、重量も100g未満のCARACLE-COZ用のオプションCZステムAL2を装着することにした。
ハンドルを支えるだけならコラムスペーサーは不要だが、11速Di2のジャンクションAを固定し、剛性向上を図るために、ステムの下にコラムスペーサーを入れ、クランプバンドで固定した。折りたたみ後の展開時に、差し込むだけでハンドル高が決まる利点もある。以前、コラムをカーボン製に置き換えてみたりしたが、さすがに剛性が不足してハンドルがぐにゃぐにゃした。さらに以前に使用していたテレスコピックハンドルポスト(旧型)の試作品は下部が長く、上部の細パイプの突出が少ないのでもっと剛性が高かった。現行のCSテレスコピックハンドルポスト2にも下部の長いロングサイズがあるが、一番下まで下げても私にはハンドル位置が少し高い。今回装着した「スポーツ」モデル用のショートサイズの方が軽いし、折りたたみ時に上部を外すと下部の突出しが少ないので扱いやすい。
ひとまずコンポはそのままで、2023年5月にハンドルポスト上部を交換した。これまでのポジションにすっかり慣れてはいたが、ハンドルポジションが前に出ると、より走りやすくなったと感じた。
その後、多忙が続き、配線方法に迷っていたり、パーツが不足していたこともあって、しばらくそのまま通勤等で使用し続けていた。しかしながら、BBから異音がするようになり、原因追及を兼ねてBBとクランクをR9100系に交換し、チェーンリングはナローワイド48Tを装着した。それで勢いがつき、2023年10月29日にBBを含むコンポを総交換することにした。まずはこれまでのチェーンを洗浄してからコンポ類を外していった。
装着するR9100シリーズの動作確認。リムブレーキ用のST-R9150は久々だが問題なく動作する。前ディレイラーは使用しない。前ディレイラー装着はユーザーの実例もあり、方法が無いわけではないが、私個人は走行性能を最優先する場面ではTORACLE-COZがあるし、CARACLE-Sはフロントシングルの方が軽量で、世界最小の折りたたみサイズを活かせると思っている。前ディレイラーを使用しない場合、左右どちらのデュアルコントロールレバーでも後ディレイラーを操作できるようにすることができる。一方で、左を使用しないと割り切れば、ジャンクションBを使用せずに、右デュアルコントロールレバー/後ディレイラー/バッテリーをジャンクションAに直結するシンプルな配線が可能だ。
約8年間CARACLE-Sの変速システムとして活用し続けたサンツアーのコマンドシフターも、これでひとまず引退。30年以上前のシステムながら、ドロップハンドル用でワイヤー式という条件なら、現在でもこれ以上軽量で操作性の高い手元変速システムは無いと思う。ギブネールは使用したことがないので断言はできないが、操作性が劣るだろう。フロント変速を使用しない場合、右だけで使用できるのでデュアルコントロールレバーのように左シフターが無意味な重りになることもない。
シマノ105以上コンポで採用されていたロード用旧10速SIS(現行Tiagra10速は新規格)に対応するインデックスプレートがシナジーストアさんで発売されていたが、11速用が発売されることはなかった。制作者によると思われるブログによると11速を試そうとはしていたようだが、発売に至ることはなかった。ただでさえ11速化でワイヤーの巻取り量が増えるのに、11速(新10速)からは1段のワイヤー移動量が大きくなったので、インデックスプレートだけでは対応できなかったのだろうと想像している。その想像を裏付けるのが、5年前にヨシガイから発売された復刻品「Wing Shifter」だ。特許期限が切れたことで類似品の発売が可能になったと思われるが、11速化にも対応したこちらはワイヤー巻取り部分が大径化され、ワイヤー巻取り量が増えているようだ。フリクションなので段数やメーカーを問わずに使用できるメリットがあるが、逆に言えばインデックスが使えない。フロントシングルの場合、左シフターが「重り」になることを許容してデュアルコントロールレバーを装着するか、操作性が劣るギブネールやバーコンを使用するか、それともフリクションのWing Shifterか、はたまた旧10速やそれ以前のコマンドシフターを使い続けるか、という選択肢しかないように思われる。さすがに限界を感じるようになってきたところで、シマノのロード用12速はワイヤー式が発売されないという時代の流れもあり(その後105はワイヤー式が追加されたが)、電動変速の装着を考えていた。
ワイヤー式にはワイヤー式の長所があるが、折りたたみ時のワイヤーの曲げ伸ばしでインデックスがずれやすいという折りたたみ自転車の宿命がある。この問題が生じないのが、電動変速だ。11速Di2でも配線の自由度が高く、どんなに急に折れ曲がっていても繋がってさえいればよいという電線の強みがある。TORACLE-COZ2に搭載した12速Di2になると、デュアルコントロールレバーが無線式になるのでさらに配線の手間が減り、ハンドル周りの配線がシンプルになって、断線のリスクもなくなる。
Di2バッテリーはTNIDi2バッテリー用シートポストラバーマウントの27.2mm用を使用し、窮屈ながらも加工せずにそのまま装着できた。虎カラーでなくなったので、コラムスペーサーはブラックに変更。
エレクトリックケーブルは、トップキャップの中心のボルト穴から引き出すことをにして、すき間を埋めるグロメットを作ることにした。適合するサイズのゴムキャップを調達して、ポンチで小孔を開けた。
ゴムキャップとトップキャップにエレクトリックケーブルを通してバッテリーに接続。長さに余裕がなかったので、ひとまずバッテリーのコネクターを上に向けてケーブルを接続したが、少し長いケーブルが入手できればコネクターを下にして防水性を高めようと思っている。
普通にプレッシャーアンカーを収めるとケーブルを通すの困難になるので、BMX用のワイヤーを通せるキャップの採用なども検討したが、最終的にはトップキャップは両面テープで貼り付けただけ。ステムを下に押し付ける機能が必要ないので、雨よけとケガの防止くらいしか役割がないし、エレクトリックケーブルを通しているので両面テープが剥がれても落下する心配はない。わざわざ重たくなる仕組みを採用する必要はない。
バッテリーに続いて後ディレイラーを装着。通勤用のホイールZ-TOUGH2のカセットスプロケットを11速のCS-R9100(11-28T)に交換して、フレームに再装着。これまでの10速の通勤用ホイールの11-25Tに28Tが1枚増えた構成なので、ギア間が開くこと無くワイド化できた。以前は(406ホイールではあったが)同じギア比で峠越えをしていたので、これでかなりの坂も上れる。
コマンドシフターとこれまた30年前のパーツであるシュパーブプロのブレーキレバーを外して、デュアルコントロールレバーST-R9150を装着。この機会にブレーキ用インナーワイヤーを新調し、アルミ製のアウターを金と黒の虎カラーから、黒主体に組み換えた。黒のストックを足しても長さが不足するので、バーテープに隠れる部分に金を残した。
ワイヤレスユニットEW-WU111がちょうどよい「繋ぎ」になり、2本のエレクトリックケーブルを接続。距離の長いバッテリーから後ディレイラーまで導いた。
チェーンを11速用のCN-HG901に交換。リアセンター422mmのCARACLE-Sで前48x後28Tだと、シマノ推奨のチェーンリンク数は108Lになるが、経験上フロントシングルの場合は少し長めの方が具合が良い。入手できればリア30Tの装着も考えていることもあり、2リンク長い110Lにしておいた。長い分にはカットできるので、これで様子を見てみる。
チェーンを装着し、後ディレイラーのインデックス調整。良好にトップからロー側まで使用できることを確認。後ディレイラー付近のエレクトリックケーブルはタイラップで固定しておいた。ケーブルのフレーム内蔵も考えているが穴あけの必要があり、強度的リスクが伴う。慎重な検討が必要なので、ひとまずは露出配線でフレームに沿わせる。
エレクトリックケーブルの後ディレイラー付近を除く部分は、後ブレーキワイヤーに沿わせてスパイラルケーブルを巻き付けて固定と保護。バーテープを巻く前に、後ブレーキワイヤーのハンドルバーに沿う部分をハーネステープで固定しつつ下巻きしていく。
ハーネステープの上からバーテープを巻いていくが、コマンドシフターを装着していた時のようにワイヤーの隙間にテープを通さなくて良いのでかなり楽。フレームカラーに合わせブラウンに変更した。
11速Di2への換装はこれにて完了。車体側もパーツ側もこうした用途を想定していないカスタマイズなので、一発で上手く行くことは期待できず、手直しは必要だろうと予想していた。しかしながら、時間を掛けてシミュレーションしていたお陰でひとまず想定通り機能し、大きな支障もない。ストップ・アンド・ゴーが多い通勤で電動変速は威力を発揮しているし、マンマシンインターフェースであるデュアルコントロールレバーがST-R9150になったことは、予想以上の好結果をもたらしている。握り心地が良くなり、ブラケット先端を握れることやコマンドシフターが無くなったことでポジションの選択肢が増してストレスが激減した。自転車自体のパフォーマンスが上がったと感じるほどだ。
整備性や車体強度のリスクを考えると、フレームに穴を開けてまでエレクトリックケーブルを内蔵しない方がいいかと思い直してもいる。
TORACLE-COZ2が再塗装のためにバラバラだった2024年2月初め~4月中旬の間、軽量なホイールZ-LIGHT改を装着して週末の遠出にも活用したが、改めて走行性能の高さを実感した。TORACLE-COZに主力機の座を譲るまでは、乗鞍ヒルクライムにスズカエンデューロにブルベ200kmとバリバリ活躍していたのだから当然だが、451ホイール化によって、さらに走行安定性や高速巡航性能が向上し、下りや荒れた路面での走破性が増してCOZとの差はかなり少なくなった。重量が約1.5kg重い分上りはやや分が悪いが、ツーリングレベルのライドなら不自由はほとんど無い。もう少しロー側のギア比をワイドにして、折りたたみ機能にも手を入れて、遠方の輪行ツーリングに活用したくなってきている。何と言ってもCARACLE-S最大の特徴である世界最小の折りたたみサイズは、旅で威力を発揮する。とは言え、デュラエースのカセットスプロケットは高価で、気軽にワイドな歯数を買い足せるものではないし、グレードダウンすると重量増になる。いずれにしてもRD-R9050の使用可能な最大ギアは30Tなので、現在の28Tと比べてわずか2Tの差しかない。であれば、旅行で使うときはトップスピードを諦めて、フロントチェーンリングを小型化する方が良いかとも考えている。TORACLE-COZをしばらくフロントシングル46Tで使用していた事があるが、46x11Tを100rpmで回せば約40km/h出るので、ツーリングなら充分使える。あらためて色々試してみたい
ご注意:本記事は、久行の個人的趣味とテック・ワンの技術検証を兼ねて行っているもので、同様のカスタマイズに対して安全性や耐久性を保証するものではありません。安全性に問題がなく、ご要望の多いものは純正品に取り入れる可能性もあります。興味のあるパーツや加工については、ご意見をお寄せください。