木工への目覚め [自転車壁掛け収納等]
これまでもちらっとは触れているが、2021年2月に17年ぶりに引越した。前居に住みづらい事情が生じたからだが、その点については円満に決着がついた。転居先も家族の通勤通学に支障の無いように徒歩で行き来できるご近所なので、生活圏に大きな変化はない。
これまでのような最上階の角部屋ではないので、通路に自転車を置くわけにもいかないし、この機会に大きくなった子供らに個室を与えたかった。公開された間取り図はイメージ程度だったので、現地でサイズを実測して作図し直した。PC上で家具の配置をシミュレートしながら、生活スタイルを考えてみた。
前居に続いて、というか前居より広い玄関の部屋を選んだので、ここに私と娘のCARACLE-S 2台(通勤・通学用)は置けるだろう。代わりに、これまで玄関に置いていた私の2台の自転車(TORACLE-COZ、猛虎四號)をどこかに納める必要がある。
LDK(リビング・ダイニング・キッチン)を除く一番大きな居室は洋室で入り口が2つあるので、間仕切りを設けて二部屋に分けることを考えた。部屋の過半は娘の個室にし、残りを(表向き)納戸にするのだ。雨天時の洗濯物乾燥室としても活用し、「ついでに」自転車を置かせてもらうことにした。ここなら玄関に隣接しているので、自転車の出し入れも楽だ。
「(自転車を置くのは)ベランダじゃあかんの?」と渋い顔のヨメさんに「納戸兼乾燥室」という建前で説得し、個室が欲しい娘を味方に付けてなんとか押切った。
賃貸住宅なので壁や床に穴を開ける訳にはいかないし、多額の予算があるわけでもない。ホームセンターを物色したり、ネットで情報を収集しながら、方法を考えた。部屋に傷を付けず、現状復旧できることが必須条件。その上で、できるだけ部屋をしっかり仕切れることが望ましい。
単純に既製品の衝立(パーティション)を置く方法から、特注で大工さんに壁を作ってもらう方法まで選択肢はいくつもあるが、素人DIYでできるだけ頑張ってみることにした。色んな方法があるが、2×4材とアジャスターを組み合わせて柱を立て、壁パネルを貼る方法を考え、住宅建材メーカーOBの父親に意見を聞いてみた。
リタイヤ世代で時間的余裕のある父親は俄然前のめりで乗り出してきた。住居としても完成度を高めるために家主に壁や天井に穴をあける許可をもらうことや、厚手の合板壁を使用することなどを提案してきた。私としては新居に馴染めずにすぐ退去する可能性もあるし、逆に長く住んで体力の落ちた老後でも自力で撤去できる仕様にしたかった。方針の食い違い加えて、仕事に追われている私と検討のペースが合わず、口喧嘩になったりもしたが、最終的に私の方針を尊重してくれ、作業も協力してくれた。
ある程度方針が決まったので、下見時の採寸をもとにサイズを考えてみた。2×4材の柱を4本立て、床と天井にも2×4材を当てて「ロ」の字型の囲いをつくり、当たり面の負担を減らすのは別々に考えた父親とも完全に考えが一致した。上下にテンションを掛けるアジャスターはラブリコの屋外用アジャスターを使用することにした。スチール製で強度があることもあるが、薄くて2面が開いているので壁板を貼り付ける際に段差が生じにくい。
引っ越しに先立って転居先に入れるように契約し、作業を進めた。2×4材を繋ぐL字プレートやビス類、接着剤や工具類などはほとんど事前に通販で揃えたが、材料のメインである2×4材や壁板などの大物はホームセンターで購入した。素人が手ノコでやっても正確にカットすることは難しいし、未カットの長尺物は持ち帰るのが難しいのでカットサービスを利用。現物合わせの一部を除き、カットしてもらった材料をホームセンターの軽トラを借りて新居に持ち込んだ。
両親が工具や材料を持って手伝いに来てくれた。床や壁、天井への当たり面にはフェルトを貼って傷か付かないようにし、2×4材を立てL字金具でつないでいく。概ね採寸と設計が正しかったようで、アジャスターやフェルトで吸収できる範囲に寸法差が収まったのは幸い。
午前中に枠組みができたので、午後から壁になる合板を打ち付けたが、作業に必死で写真を撮り損なった。表面処理の必要ない化粧合板を使用することも考えたが、単体で使用するには薄すぎるし、幅が狭いので柱を多数立てる必要がある。父親は強度を確保できて防音性も期待でき、直接棚やフックを装着できる厚手の合板を勧めていたが、重量がかなりあるので床への負担が心配だし、高所で扱うのは今の私でも厳しい。いざという時に私が一人で撤去しやすいことも考えて、薄手の5.5mm厚構造用合板を使うことにした。
910x1820mmの合板を2枚はそのまま並べて2×4材にボルト留めしていき、窓側の1枚と上方の3枚はカットしておいたものを装着していく。ホームセンターのカットサービスでは複雑なカットを受け付けていないこともあって、窓側の複雑な部分は現物合わせで手ノコでカットした。
壁がほぼできたところに娘がやって来て「壁が生えてる」と目を丸くしていた。もっとも簡易的なものを想像していたらしい。自室を作るために彼女も手伝いに加わり、ビス留め穴や合板の継ぎ目の段差をパテで埋めていく。
続いて娘の個室側に壁紙を貼っていく。裏糊を塗布した壁紙をこの業者から送ってもらい、すぐに貼り付け作業ができるようにしておいた。生のり付き壁紙は乾くまで剥がしてやり直すことができるので、初心者には扱いやすい。耳なしタイプを選んだので、端のカットも省略可能だ。ただし使用期限(2週間だったかな?)があるので、長期保存はできない。
なんとか一日で大まかな作業はできた。父親は壁紙の端を重ね粘りすると剥がれやすくなることを気にしていたが、今回は作業時間短縮のためにそのままにした。壁紙は4,000円足らずだったので、剥がれてきたら張替えて、今度は重なり部分をカットするようにしよう。
窓側のカーテンボックスは自重で下がってきているようで、水平と垂直が出ていない。現物合わせで調整して合板をカットした。窓サッシのギリギリまで壁を延ばしたので、下側の窓枠を乗り越える切り欠きも作った。ついでに、カーテンボックスの上方にエアコン配管を通せる切り欠けを作っておいたが、とりあえず壁紙で塞いでおいた。合板はないのでいつでも壁紙をカットするだけで配管を通せる。
「納戸」側は壁板も壁紙も貼らず、2×4材をむき出しにしておく。こちらには照明がないので、2×4材に板を装着してリモコン付きのLEDライトを装着した。照明を装着した板は父親のアイディアで裏側に天井に密着するように板が挟んであり、地震などの際に壁が倒れることを防ぐ突っ張りになっている。窓の2/3は娘の個室側だが、納戸側もベランダでの作業に備えて私の自転車のハンドルが通せる幅を確保している。カーテンはそれぞれの部屋で別のものを使用する。
ひとまずこの状態で引っ越し、新生活を開始した。娘は(細かいことはさておき)自室を得られたことで、概ね満足しているようだ。
続いての野望は「納戸」に自転車を吊れるラックを設けること。とは言え、単純に壁にフックを装着して自転車を吊ると、壁が納戸側に倒れてしまわないか心配だ。前述した照明取り付けを兼ねた突っ張り板も、娘の個室側への倒れを防止する方向で設けてある。
いくつかの方法を検討したが、もうひとつの目的である洗濯物干しを作るためにも、少し離れたところに柱をもう2本立て、鳥居状の構造を作ることにした。今回は構造も簡単なので、手書きのスケッチで済ませた。
ホームセンターで2×4材を購入し、カットサービスで切断。物掛けとなるステンレスポールは通販で入手して、パイプカッターで切断した。
上部構造を後から組み立てるのは大変なので、下で柱と位置合わせをして金具を装着しておいた。天井とのクリアランスが少ないので後から装着が困難なステンレスパイプの受けも、先に装着しておく。
まずは両端の壁側に2×4材の柱を立て、桟(横木)を装着する。今回もラブリコの屋外用アジャスターで固定したが、今回は床と天井に直接固定した。部屋の真ん中に横板を這わすわけにもいかないし、今回は自立構造になるのででさほど固定力が必要なわけではない。
壁の柱との間にも桟(横木)を装着する。この日は最上部に1本だけだが、こちら端の柱には後日もう少し下方にもう1本桟(横木)を入れて鳥居形にし、強度を高める。
壁の柱4本全てに桟(横木)を掛けるのは過剰かとも思ったが、地震の際の力のかかり方は素人にはわからないし、この桟自体も物掛けに利用できるだろう。事前に受けとなる金具を装着していたので、片側を突っ張りポールで支えるだけでビス留め作業ができるのは、我ながら正解だった。
いっそ自転車ラックも木工しようかとも思ったが、やはり市販のフックを使う方が楽だ。壁板の5.5mm厚構造用合板では支えられないので、1X8材を買ってきて桟を追加しフックを装着してみた。ところが、MTBも想定したフックは自転車が壁からかなり離れてしまい、スペースがもったいない。
壁側にホイール等を吊ってみたが、こうすると自転車が窓側に寄り、ハンドルが幅を取ることもあって、ベランダへの出入りが困難になることがわかった。机上の目論見通りには行かず、再検討が必要になった。別件だが、壁際のコンセントがちょうど柱に隠れてしまうので、配線を延長して下の方に見えるACコンセントを増設した。すぐ横にあるグレーの箱は娘の部屋側に増設したACコンセントだ。
勤務先に持っていき、大型のバイス(万力)に固定して、450mmモンキーレンチで曲げ加工。本来モンキーレンチで挟む側では埒が明かず、柄のリングを通して汗だくになって渾身の力で曲げた。
これが曲げ加工後のフック。後輪がギリギリまで壁に近づくように、あえて壁と平行ではなく斜めになるようにした。
無事に2台の自転車を固定できる壁掛け自転車ラックが完成した。自転車の顔である右側をこちら側に向けられないのは残念だが、この方がハンドルがベランダの出入りの邪魔にならないし、家族にチェーン油が付着していらぬトラブルを招く心配もないだろう。
ホイール等を吊って収納するのは諦め、自転車収納位置を窓の反対側に寄せた。それでも壁側に少しスペースを確保して、自転車用品を収納する棚を作った。棚板はこの業者でピッタリのサイズにカットし、柱を逃がす切り欠きを設けて、角を落とす面取り加工まで施したものをオーダーした。治具もなしに自力できれいにカットする自信が無いからだが、やはり仕上がりはきれいだ。ヨメさんから玄関近くに防寒着などを掛けられる場所が欲しいとの要望もあり、ハンガー掛けも設置した。
棚板の支えを兼ねて桟(横木)をもう1本加え、鳥居構造が完成した。これで安心して重量物を載せられるし、かなりの地震でも壁が倒れることはないだろう。
スペアホイール等を吊るのを諦めたので、ステンレスポールを手前の桟に固定して、雨天用の洗濯物干しにした。乾燥機と組み合わせ、雨天時の洗濯物乾燥室として活躍している。
自転車を整備する作業場所としても活用しており、半ば「早朝から深夜まで自転車整備できる場所の確保」という目的は達成できた。前居ではマンションの通路で整備していたので、工具やケミカル品を出し入れして、汚れないように養生して、整備後には片付けと清掃・・・と整備するたびに合計20分ほど準備と片づけに時間を取っていた。なかなか気軽に整備ができないし、早朝や深夜の作業も憚った。日をまたぐ作業も、いちいち出し入れしなければならなかった。それを思えば、すぐ横の収納に工具類が揃っているので、気軽に整備ができる体制になった。ただ、雨天時には洗濯物乾燥室になってしまうので、「雨で自転車に乗れないから自転車いじり」といかないのは誤算だった。
「納戸兼乾燥室」を隠れ蓑にした自転車部屋の確保という隠密作戦は成功したように思ったが、家族は「お父さんの(自転車)部屋」と呼んでいるので、バレバレのようだ(笑)。
きれいに仕上げるために工具や技術が必要な「木材カットと塗装は自力でしない」という中途半端なものだが、久々の木工にちょっとハマった。採寸と設計、そして実作業と、金属やプラスチックの自転車とはまた異なった達成感がある。
その勢いで、手を付けてしまったのが、このPCラック。私とヨメさんのPCを2台置きするには都合のいい幅だったが、ヨメさんのPCはノートPCになり、私のPCだけを置くことになった。ブラウン管式のCRTディスプレイ時代に購入したので奥行きも長く、手狭な部屋で場所を取りすぎる。
長年の重量物の積載に耐えかねて棚板を固定する鬼目ナットが棚板を突き破ったので、棚板を裏返したり、針金で固定したりとボロボロの状態。この機会に買い替えも考えたが、4段の棚や、一番下に椅子の脚が収まること、しっかりしたスチールフレームといった、このラックと同等の機能を備えながら幅の狭い製品は見当たらなかった。
色々考えた末、ボロボロになった棚板を幅の狭いものに交換して、スチールフレームは再活用することにした。既製の棚板には都合のいいサイズがなく、今回も棚板をこの業者で特注した。幅と奥行を考えて発注し、角落としや面取り加工、オスモカラー塗装まで施してもらった。
設計には頭を使ったが、組み立て作業自体はほぼビス止めのみ。棚板に鬼目ナットを挿入すれば何度でも組み立てと分解ができるが、肉厚が薄くなって棚板が割れてしまうことは交換前の棚板で経験済み。ここはあえてロングサイズの木ねじで固定した。
少しキーボードやディスプレイを高くしたかったことや、下の棚にPCが収まる高さを確保するために角材で下駄を履かせた。
無事に幅と奥行を減らしたPCラックが完成した。材料費だけで12,000円程度かかっているので、既製品でもっと低価格なものがある。とは言え、無駄を削ってキーボードとマウス操作できるギリギリの幅に抑え、使いやすい高さの丈夫な4段ラックが手に入った。おかげで家具を置くスペースが確保でき、窓が開けやすくなり、押入れの出し入れが楽になった。生活の質が向上した満足度は大きい。
私は自転車でも買ったままでは満足できず、手を入れないと気が済まないし、猛虎弐號、参號、四號とフレームからオーダーして自分で組み上げた自転車にも乗ってきた。自分の体型や使い方に合わせた自転車は快適だし、そのための作業は楽しいものだ。自転車だけで精一杯だったこともあって、それ以外のことは無頓着な生活を続けてきたが、今回のことで生活を自分の力で改善する楽しさを思い出した。
ヨメさんも一応評価してくれているようで、台所の物置き棚という次のオーダーも入っており、今回PCラックから外した棚板を再利用できないかと思っている。日々の仕事と自転車活動に追われて「次々と」とは行かないが、木材の切断や塗装にも踏み込みたい気持ちもある。フリーハンドの手ノコできれいに切断するのは難しいので、電動丸のこや各種の治具に興味が湧いたりもしている。
コメントを残す