アビィワンの大塚さんのこと

180713_185603カンパニョーロとイタリア車を愛し、仕事を超えて自転車の魅力を伝えることに努めた自転車の大先輩が、マリア・ローザと共に旅立たれました。

サイクルハウス アビィワンの店長、大塚政宏さんとの出会いは恐らく1996年。前職時代に、仕入れで来社された時でした。当時でも骨董品だったクレーン(初代ジュラエース)のRDや、シマノ600のセンタープルブレーキが付いた私の通勤用ロードバイクを見て、「これ、あんたのか?」と声を掛けられました。

カンパを最も愛しながらも、少年時代から自転車に親しんだ大塚さんの知識は国産パーツを含めて幅広く、奥深いものでした。そんな大塚さんが経営するアビィワンを訪問したのは、それからまもなくでした。

140427_092728r恰幅のいい体格に口ひげを蓄え、時に厳しい物言いをされる大塚さんに、最初は怖さも感じていました。ところが交流を重ねるうちに、一見突き放しながらもしっかり見守り、親身に相談に乗ってくれる暖かい人柄であることがわかってきました(少なくとも、自転車を愛する後輩には)。

結婚して自宅が近所になった事もあり、頻繁に脚を運んだ2000年前後、「支店を作るので一緒にやらんか?」との誘いを受けました。非常に光栄な話で、私も真剣に考えました。とは言え、自分の使っているパーツ以外の整備には全く自信がなく、前職での仕事が軌道に乗っていた時期でもありました。結婚したばかりで、まもなく増える家族を思うと全く新しい仕事に取り組むリスクも考えざるを得ませんでした。

結局、お誘いを謝絶したこともあって合わせる顔がなく、しばらく足が遠のいたこともありました。それでも時折り仕入れに来社される大塚さんは、今まで通り親しく接していただきました。

再びアビィワンに足を運びだしたのは、6~7年前から。営業方法をの見直して、仕事帰りに近隣の販売店を回りだしたのがきっかけでした。仕事上考えることも増えた私に大塚さんは昔と変わらず、親身に相談に乗っていただきました。

140427_0927282014年から、大塚さんはfacebookを活用して販売店に依存しないサイクリング団体「大和川サイクリング倶楽部」を立ち上げ、錦ロイヤルの長島さんなど他店スタッフとも協力して、楽しく安全なサイクリング活動を普及する活動に取り組まれました。初期には私も世話人に誘われ、何度か運営に関わりましたが、私の転職などで時間の確保が難しくなり、最近は年に数回しか参加できていません。同団体は現在650人を超える方がメンバーとなり、何人かの世話人の主催で月にいくつものイベントが開催されています。

仕事上も大きな手助けをいただき、前職でも多くの商品を導入いただき。転職後も折りたたみ自転車の新ブランドCARACLEの立ち上げに数々のご協力をいただきました。販売店主導のものとしてはどこよりも早かった試乗イベントを企画していただき、独立前に自らも自転車ブランド「センチュリオン」を立ち上げた経験のある大塚さんは、商品展開や製造のノウハウ、販売方法を助言してくれると共に、豊富な人脈を活かして各分野の専門家を紹介してくれました。

そんな大塚さんと、最後にお話したのは6/28(木)でした。電話で在庫確認があり、「今日お客さんが来店するので、確定したら明日電話する」とのことでした。ところが翌日にお電話なく、「どうしたんだろう?」と不思議に思いながらも、催促するのも憚っていた7/4に大和川サイクリング倶楽部のKさんから「先週金曜日(6/29)に大塚さんが交通事故に遭われました」との一方が入りました。

奇しくも私とお電話でお話した翌日に、歩行中に自動車にはねられたとのことでした。頭を打っているので眠らせて治療を行っている(脳低温療法)とのことでしたが、今までも何度も事故や病気から復活してきた大塚さんです。今回も、(時間はかかっても)回復されることを疑っていませんでした。

事故から2週間近く経った7/12、営業回りの最後にアビィワンの様子を見に行きました。当然、大塚さんのいない店舗はシャッターが閉められており、しばらく休業する旨の張り紙がされていました。

その夜、大塚さんが17時前に亡くなられたとの知らせが入りました。アビィワンに立ち寄ったのは、その少し前だったようです。今から思えば、何かを感じたかのようなタイミングでした。

信じられない思いのまま参列した、通夜と告別式。トレードマークの口ひげを剃られた大塚さんは、とても優しい顔立ちで、眠っているだけのように見えました。式場には愛車のCARERAと共に、ジロ・デ・イタリアの最優秀選手が纏うマリア・ローザやカウボーイハットが飾られました。

自転車を通じて交流のあったお客さんや業界関係者、そしてオーディオや鉄道などの趣味を通じて交流のあった友人たちの見送る中、マリア・ローザとカウボーイハットは棺の中に収められ、大塚さんと共に天に昇りました。

未だ実感は沸かず、アビィワンを訪ねれば大塚さんが「おう!」と迎えてくれる気がしてなりません。喪失感は、恐らくこれからやって来るのでしょう。もう、大塚さんに相談に乗ってもらうことができないという事実を受け入れるには、少し時間がかかりそうです。

合掌


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これまでのコメント

  1. […] やはり一日で地理的に離れたイベントを掛け持ちするのは無理があった。実は今日はアビィワンの大塚さんの追悼イベントもあったのだが、不参加に終わった。近いうちに個人的に墓参 […]

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