通勤用CARACLE-S組立て その1
CARACLE-S 2016モデルの試作車であるTORACLE(虎来る號)の導入により、これまで主力だったCARACLE-S 2015モデル試作車は組換えて通勤を中心に活用することにした。
ついては、これまでの通勤車「鉄下駄號」はパーツ流用と保管場所確保のため、引退させることにした。すでにブレーキレバーやシフターなどを取り外していたが、8/15に本格的に分解した。
まずは分解前に洗車して、一気に汚れを落とした。パーツ類もある程度きれいになった。
続いて、パーツ類を外しながら、細部をクリーニングしていく。
まずチェーンを外して延び具合をゲージで計測したが、まだ交換が望ましいほど延びてはいないようなので、クリーニングして保管。このサンツアーAP IIチェーンCH-AP11は、Cyclemeterの記録が残っているものだけでも、2014年04月13日の交換以来9,228kmを走行しているが、まだまだ使えそうだ。
その前に使用したシマノCN-HG91は、約3,200kmの走行で音鳴りがひどくなり、交換が必要なほど延びて交換した。サンツアー製パーツとの相性が悪いのかもしれないが、シマノ製がこれほど短寿命というのも不自然。同じような通勤ライドでこれほどの差が出るのは驚きだ。
思い切りトルクを掛けて装着したBB(ボトムブラケット)は、なかなか外れず往生したが、フィキシングボルトをヘッドスパナの穴に通してBB工具をズレないように押さえ込み、渾身の力で何とか外した。
フレームについていたパーツをヘッドパーツ以外全て外し、8/15の作業終了。
翌8/16にも作業を続行し、外したパーツをクリーニングやグリスアップ。ほとんどのパーツは次の出番に備えてストックしておく。
置き場所を取るホイールもバラしてしまう。猛虎四號のリムの前後が銘柄も時代も不釣り合い(前:アラヤCTL-370/後:MAVIC OPEN PRO)なので、移植することも考えている。鉄下駄號で使用していたMAVIC MA40なら、周囲のパーツとの時代もマッチするのだが、重量増になってしまうので悩むところ。性能的にはむしろ前後共にOPEN PROにした方が良いのだろうが、こちらでもCTL-370よりは重くなる。
すでにTORACLE(虎来る號)の組み立てに際して、ブレーキレバー外していた。
ところが、リターンスプリングなしの前期型だったため、(できる範囲で)最高性能にしたいTORACLEには結局CARACLE-S 2015試作車で使用していたスプリング付きを装着。玉突き移動でCARACLE-S 2015試作車には鉄下駄號から外したレバーを装着するため、あらためてクリーニング。
クリーニングしても傷だらけのボロボロ(^_^;)。それでも機能的には問題なく、手に馴染んでいるのでなかなか手放せない。レバーパッドは交換したが、入手困難で寿命の短い純正品ではなく、ヨシガイのBL07用レバーパッドを流用。
これもCARACLE-S 2015試作車再稼働のための下準備だが、鉄下駄號から外したコマンドシフターのインデックスプレートをサンツアー純正の7速用から、シナジーストアで販売している10速用に交換。このプレートの導入により、シマノ10速コンポーネントのシフターとして、軽量なコマンドシフターを活用できる。
・・・のだが、実は違う活用の仕方もあるとのこと。どんな風に使おうとしているかは、あらためて。
コマンドシフターの分解はつい最近、TORACLE(虎来る號)の組立て時にも行っていたが、前回は途中で落としてバラバラにしてしまい、往生した。今回は途中で撮影しながら慎重に作業したが、やっぱり苦戦を強いられた。特に、最後にスナップリングを止めるのが大変。
何とか組換えを行い、ついでにグリスアップして組み込み準備完了。左シフターはCARACLE-Sでは使用しないので、クリーニングは後回し。
その後は、ノリクラに向けてのTORACLEのメンテナンスで精一杯。
9/4にも少し自転車をいじったが、この時はTORACLEにフロントバッグアダプターやバックミラー、リフレクターなどを装着し、大型ボトルに対応するボトルケージに交換したり、といった最低限の日常装備の回復のみ。なかなか2015試作車に手がつけられなかった。
9/11になって、ようやく作業時間を確保できたので、2015試作車再稼働ための作業を再開。
まずは、この機会にフレーム周りをクリーニングする。すでにブレーキや変速系のコンポーネントパーツは外しているが、折りたたみ自転車はフレーム自体に分解箇所が多い。
ハンドルポスト、前フォーク、後フォーク、サスペンション、サポートバー(サスペンションに繋がった黒いパーツ)、ヘッドパーツなどを外し、クリーニングとグリスアップ。
メインフレーム中央の折りたたみ部分を繋ぐシャフトは、ガタを防ぐためにかなり強固に圧入されている。簡単には外せないし戻せないので、滅多なことではいじらない方がよい。今回もパーツクリーナーで汚れを吹き飛ばしてグリスを擦りこむに留める。QRプレートなど外せるパーツは外してクリーニング&グリスアップ。
後リンク(メインフレームと後フォークの間)のオイルレスベアリング(黒っぽいプラ部品)も割れたり変形する恐れがあるので、交換するつもりでなければ外そうとしない方が無難。
これもパーツクリーナーでクリーニングしてグリス塗布。無給油使用が保証された含油ポリアセタール樹脂製オイルレスベアリングだが、グリスを塗布すればよりスムーズに動作する。樹脂製とは言っても耐久性は高く、5000km程度の走行では大きな傷みはなかった。走行距離10000kmを越えた他の個体でも、それほどの損耗はなかったので、まだまだ交換の必要はないだろう。
かなり分解とクリーニングの進んだフレーム周り。1年半の酷使で可動部にかなり汚れが溜まっていたので、良い機会になった。
残っていたサポートバーも分解清掃。シートポストを後方から支えるCARACLE-S独自の機構で、世界最小サイズに折りたたむための重要な仕組みのひとつ。
サポートバー自体はアルミ合金製で、サスペンションをつなぐボルトや、QRシャフトを咥えるタイコはチタン製という涙ぐましい軽量化の努力はCARACLE-Sの特徴のひとつ。そして、その他のフレーム回りのボルト・ナット類もほぼステンレス製。サスペンションに付属するボルト類を除けばスチール素材を使用していないので、フレーム回りにサビの発生は皆無だった。
クリーニングの終わったパーツにグリスを塗布しながら組み直していく。
後部リンクは10mmと6mmのアーレンキーで、両側からしっかり締め上げる。最終的にガタがなく、かつ動きが渋くならない程度に調整。
サポートバー下部のシャフトを固定するナットは、ネジのゆるみ止め剤の使用が望ましい。中強度のゆるみ止めを塗布した上で、動きが渋くならない程度に締めて固定する。
サスペンション後部のリンクパーツも。ネジのゆるみ止め剤を使用。「コ」の字型のパーツの回転を妨げず、かつガタがないようにボルトを締める。
ヘッドパーツにもグリスを塗布して装着。ヘッドパーツは折りたたみサイズを小さくすることにこだわった非常に薄型のもの。ワンをフレーム側に圧入するいわゆる「セミインテグラル」とか「ゼロスタック」と言われる規格。自転車業界で言うシールドベアリング(カートリッジベアリング)を使用しているので、メンテナンスが簡単で長期間安心して使用できる。
フォークやハンドルポストをフレームに装着して、今朝フレームを分解する前の状態まで復旧。さて次はどうするか・・・。
ちょっと考えたが、装着するBB(ボトムブラケット)のメンテをすることにした。チェーンホイールと一緒に友人に譲ってもらったこのBBは、サンツアーのシールドBB。1980年台中頃のパーツだが、ベアリングの回転はスムーズ。とは言え、製造から約30年間を過ぎており、それなりにハードに使用していたと思われる友人からも状態を確認して欲しいと言われていた。そこで、念のためベアリングを打ち替えを試みることにした。
内部構造も見えないので勇気がいるが、恐らくは最近のシールドベアリング(カートリッジベアリング)を使用したBBと同様に、ベアリングの間にアルミの筒を挟んでいるだけだろうと判断。手持ちのベアリングプーラーを段差にあてがってアルミ筒ごとベアリングを外側に引っ張る。
すると、大して力も掛けないうちにスルスルとベアリングが外れた。最近の同種の商品のように固く圧入されていないようだ。
ベアリングの内側にはBBシャフトに溝切してスナップリングが嵌めてあり、ベアリングの位置ずれを防いでいる。ベアリングとスナップリングの間には厚さの違うワッシャが2枚挟んであり、これはサンツアーのペダルなどと同様に、クリアランスを調整できる仕組みなのだろう。
反対側も念のためプーラーを用いたが、やはり簡単にベアリングが外れた。これなら軽く叩く程度でも外れるかもしれない。
両側のベアリングを外した状態。反対側のワッシャは1枚だけだった。圧入部分にサビが生じていることからも、強く密着しておらず空気の入る隙間があることがわかる。
ベアリングは深溝玉軸受6903という、他社のBBでもよく使用される規格。元々ついていたのは、サンツアーの他の商品でも使用されているIKS(泉本精工)製だが、同社は松原市にあり、私は毎日横を通って通勤している。何となく親近感もあるし、同じベアリングが一番安心だが、同社商品を少量で入手できるルートが見つからない。
もちろん、国際規格なので他社商品でも一応は問題ないはず。今回はストックしていたNTN製6903LLUを使用。LLUとは同じサイズのベアリングの中でも「両側接触ゴムシール形」を表すNTNの品番。元のIKS製と同様に、両側をゴムシールで密封した防水性の高いモデルだ。原理的にはより抵抗の少ないモデル(非接触シール形、シールド形、開放型、片側シールド形等)もあるが、雨中走行や洗車のある自転車では両側接触ゴムシール形が無難だ。
ベアリングを装着する際には内部の鋼球やワンに負担を掛けないように、内側の枠に力を掛けて圧入したい。そのためには手持ちのベアリングプーラーの長さが足らなかった。後日勤務先の万力(バイス)を借りようかと思ったが、試しにあてがってみると手の力だけでも、ベアリングが途中まで入っていく。結局、両側にパイプをあてがって体重をかける掛けるだけで圧入(?)は完了した。
後は左右ワンを両側から嵌めれば、BBの組立完了。シャフトは左右対象に見えたが、「L」「R」の刻印があったので、一応注意してアルミ筒の図と合わせておき、ワンの左右も一致させて組み立てた。
こうなれば、ついでにフレームへの組み付けも試しておく。「試す」と書いたのは装着用の専用工具が無いので、きちんと装着できるか不安があったからだ。もし装着不可能であれば、絶版久しい専用工具を何とかして入手するか(ネットオークションで4000円以上)、他のBBを調達する必要がある。
グリスを塗布してフレームに装着していくが、ロックリングはスギノ製のBB工具で回せる。前述の専用工具はワンが共回りしないように固定するものだと思うが、スギノ製のカニ目レンチを上手く当てると、切り欠きに引っ掛かるが、屁のつっぱり程度。
このBBはチェーンラインが調整できるように、両側にロックリングを使用している。左右ワンが共回りして余計に調整が難しかったが、「屁のつっぱり」がかろうじて用を満たし、何とか満足のいく玉当たりで装着できた。手持ちの工具で何とかできて幸いだった。
ベアリングプーラーを使用したついでに、以前CARACLE-S 2015モデルに装着していたスギノ製BBマエストロのベアリングも外した。こちらはサンツアー製と異なってそれなりに手応えがあったが、苦労するほどではなくスムーズにベアリングを外すことができた。
サンツアー製のように2つのベアリングを繋いで支えるアルミ筒はなく、軟質樹脂製の防水スリーブが挟まっているだけ。使用しているベアリングはサンツアー製と同じく深溝玉軸受6903規格。
同じベアリングを使用しているのだから、もし手持ちの工具でサンツアー製シールドBBが装着できなければ、このワンに交換するのも方法だっただろう。
なぜこのベアリングを外したかと言うと、サビてしまって動きも渋かったから。ゴムシールを開けてみると、ベアリング内部までサビサビだった。シールがあるベアリング内部までサビたのは、これまで見たことがない。シャフトはチタン製でワンは軽合金なので、周囲にもらいサビが広がる恐れはないが、気持ちの良いものではない。
原因として考えられるのは外側のワンにゴムシールがないこと(サンツアー製にはある)。そのため、雨や洗車の水流が内部に入り込みやすかったのだろう。
NTN製6903LLUはもう2個ストックがあるので、ついでに圧入までしようかとも思ったが、ベアリングプーラーのサイズが不足しているし、すぐに使用する予定もない。この状態を見ると、再使用する際にはサビに強いステンレス製ベアリングを装着した方が良いかもしれないとも思えるので、作業は先送りした。
サンツアー製シールドBBに装着するチェーンホイールは、やはりサンツアー製のシュパーブプロ。以前所持していたが、結婚時に手放したことを悔やんでいた。改めて友人からBBと一緒に譲ってもらうことができたので、17年ぶりに活用することにした。以前所持していた後期型とは異なり、マニアの間ではより価値が高いとされる「S」刻印入りの前期型だ。
CARACLE-Sで使用するにあたってチェーンガード一体型の47Tシングルギアに交換。
TORACLEで使用しているMicroHERO製と見分けがつかない形状だが、ブランド名はLiteProという別物。理想を言えばもう少し大きな歯数があれば良かったのだが、勤務先に転がっていた(?)ものを拝借したので、文句は言えない(笑)。
MicroHERO製と同様に、本来のアウターギアとインナーギアの中間(チェーンライン)にギアが来るようにオフセットしているので、リアスプロケットのトップからローまでチェーンのひねりが少なく変速性能や伝導効率の向上が望める。・・・のだが、実は気になることがある。
友人からシールドBBとチェーンホイールをセットで譲り受けたが、シールドBBには「TYPE:TRACK」の表示があり、ワンやロックリングまで軽合金なので、型番SA-100と思われる。これは軸長108mm、チェーンラインは42mmのトラック用のものとされている。ロード用ダブルクランクには別に、軸長117mm、チェーンライン43.5mmの型番SA-110がある。両者にはチェーンラインの差が1.5mmある。
もっとも、友人はこの組み合わせで使用していたのであり、少なくともサンツアーコンポでの使用では、この程度のチェーンラインのズレは大きな問題ではなかったのだろう。むしろ、Qファクターの減少、剛性アップ、軽量化などのメリットがあるので、この選択をしたのかもしれない。
シマノのロード用ダブルクランクの推奨チェーンラインも43.5mmだが、リアスプロケット側のチェーンラインは10Sで42mm程度との話もあり、逆にTRACK用の方がぴったり一致する。何より、シールドBBはチェーンラインを調整できる(専用工具なしに何度もいじりたくはないが)。別の対処法としては、オフセットのないギアをアウター位置に装着する手もある。とりあえず、このまま組み立てて様子を見よう。
ギア板を交換したチェーンホイールをBBに装着。シュパーブプロのフィキシングボルトは主流の14mmと異なり、15mmサイズ。アルミ製フィキシングボルト用に購入したレンチが役に立った。
続いてハンドルとステムを装着。以前からCARACLE-S 2015試作車で使用していたものを戻したのだが、ハンドルバーはFSA製オメガ。ステムはDixnaブランドでステムクランプはセパレートタイプのものをチタンボルトで装着していた。TORACLEに装着しているステムもブランドはgrungeだが、どちらも東京サンエスのブランドなので、試しにこの最軽量仕様のステムクランプをTORACLEに移植してしてみた。
結果としてTORACLEには無事に装着でき、さらに10数グラムくらいは軽量化できただろう(笑)。ところが入れ替えで2015試作車にステムクランプを装着しようとしたら、幅が合わない。残念ながら完全な互換性はないようなので、他のDixnaステムからH型のプレートを外して装着した。
よく見ると、TORACLEに装着したステムクランプも横から見るとアウトラインが段になって繋がっておらず、スタイルが崩れている。同じ径のハンドルバー用だし、抵抗なく取り付けることはできたので、恐らくは機能上の問題はないだろう。ちょっと力を掛けたくらいでハンドルがズレることもなかったが、注意はしておこう。
シートポストやサドルも仮装着して整備スタンドにぶら下げ、次はブレーキ本体の装着。これも元々付いていたシマノBR-R353を再装着。シューカートリッジやチタンボルトなどのチューンナップパーツはTORACLEに回したので、どノーマル仕様。
ホイールは2016仕様を装着して、ブレーキ調整。旧仕様の2015モデルホイールをTORACLEに回しているのは、わずか10g(ペアで20g)ながらリムが軽量だから。
2016モデルの方はタイヤの着脱が容易というメリットがあるが、ケブラーやアラミド等のビードを使用している軽量タイヤなら2015モデルでも問題ない。
9/11の作業はここまで。やっと自転車らしい形にはなったがまだまだ未装着のパーツが多く、再稼働まではもう少しかかりそうだ。
[通勤用CARACLE-S組立て その2]に続く
ご注意:本記事は、久行の個人的趣味とテック・ワンの技術検証を兼ねて行っているもので、同様のカスタマイズに対して安全性や耐久性を保証するものではありません(自動車会社のF1やワークスマシンみたいなものと思って下さい)。安全性に問題がなく、ご要望の多いものは純正品に取り入れる可能性もあります。興味のあるパーツや加工については、ご意見をお寄せください。
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