TORACLE(虎来る號)組立て その1
ちらちらと触れていたCARACLE-S 2016モデルだが、勤務先から私に与えられたフレームは実は3月には入荷していた。
とは言え、品質検証と新色検討のための試作フレームなので、量産品が入荷するまでは手を付けられなかった。4月末に量産品が入荷してからは、お客さんのCARACLE-Sの組み立てが最優先なので、自分用の個体を触る余裕もなく2ヶ月放置状態。残念ながら、スズカエンデューロには間に合わなかった。
ようやく2016モデル発売後のバタバタも落ち着きつつあるので、ノリクラに向けていよいよ組み立て(というか、載せ替え)を開始することにした。
まずは2016モデルを6/25に自宅に持ち帰り、6/26のトレーニングの後に標準仕様のパーツを取り外していく。ほぼ、裸になったのがこの状態。そう、恐らくは世界にただ1台の黄色いCARACLE-S。
市販モデルには採用されなかったが、毎年タイガースルックでノリクラに参加する私にとっては、ぴったりのカラーリングだ。CARACLE-Sの走行性能には満足しているが、2015モデルはホワイトだけなのが個人的に残念だった。タイガースのユニフォームと同じく白地に黒い細線(縦縞)という手もあるのだが、これは学生時代に実践したことがあり、遠目にはあまり目立たない。やはり、黄色地に黒を組み合わせていくのが、最もタイガースらしい。
裸にしたフレームをガラス系コーティング剤(試供品)を吹き付けて塗り広げる。驚くほど劇的に見た目が変わるわけではないが、塗装の輝きが増した。効果が長持ちするとのことなので、作業前の一手間。
そして、タイガース仕様へのカスタマイズ開始。まずは命名式がてら、車名のカッティングシートを貼り付けていく。
名付けて「TORACLE(虎来る號)」。
・・・虎+CARACLEという安易なネーミング(^_^;)。カッティングシートはノリクラ仲間でもある大学の先輩に作ってもらったものだ。
実は新車に「虎」の名を付けると、それまでの「虎」が寿命を迎えるという事例が2回続いており、「虎は二匹飼えない」と公言していた。今回の命名もちょっと心配だが、やはり主力車には虎の名を背負ってもらいたい。
タイガースらしく(?)、すっかり下品になったCARACLE-S 2016モデル(^_^;)。
続いて7/3の朝から、作業再開。まずは重量計測。CARACLE-S 2016のフレームは前フォーク、ヘッドパーツ、折りたたみ部分のシャフトやQRレバーなど込みで、2995g。ほぼ3kgだ。
テレスコピックタイプのハンドルポストは805gなので、フレームと合わせて3.8kg。
折りたたみ自転車は関節が金属の塊になってしまうので仕方がないのだが、最近のカーボンロードバイクだと、フレーム+フォークで1.2kgを切るようなモデルもあるので、重量的にはやはり差があるなあというところ。ちなみに、クロモリ製の猛虎四號はフレーム+フォーク+ヘッドパーツで、2620g。
費用や使い勝手を考えると簡単ではないが、せめてパーツ類はできるだけ軽いものを使用したいところ。そんな中で、今回新たに導入した飛び道具は、ZIPPのカーボンハンドル。上司が調達したものを奪い取ってきた。こちらは未加工状態で240g。ちなみに現在使用中のFSAオメガ(RD-300S)が未加工状態で300gで、末端をカットして280g。
あくまでポジションチェック用の仮の選択だが、Dixnaの60mmステムは120g。
CARACLE-Sより先に、組み換え中にピンチヒッターとして通勤に使用する猛虎四號の整備。しばらく出番がなかったので、チェーンクリーニングや各部のオイルアップ。
シートポストをCARACLE-Sの決戦用に借用しているので、安物のリッチータイプを装着。かつてクロモリ自転車で採用が多かった26.8mm径は上級グレードが何本もあるが、27.2mm径は手薄だ。
ペダルは通勤用に、フラット+トゥクリップ仕様に変更。
一方で、これまでの通勤車はパーツの一部を流用するのと、置き場所の問題でこの日全日本BMX選手権観戦の往復で使用したのを最後に一応の引退。
最近は「鉄下駄號」と称していたこのクロモリバイクは、2013年秋に猛虎参號の突然の引退で、急遽入手したフレーム。無銘で製造者は不明だが、パイプメーカー石渡の刻印があったことや、リヤエンド幅126mmなので恐らく1980年台半ばに作られたショップオリジナル車用のベースフレームだろう。
ひょっとしたら27インチホイール用なのかもしれないが、700×28Cタイヤとマッドガードを装着できるクリアランスを確保できる(ブレーキはラージサイズが必要で、最近は25Cタイヤを装着していたが)。入門クラスの分厚いパイプの重量級フレームで正に鉄下駄だったが、それだけに安心してハードに使用することができ、前職時代から毎日の通勤を支えてくれた。
鉄下駄號は記録のあるものだけでも、2013年11月の組立てから10,984kmを走行している。記録を取っていないちょい乗りなどを合わせれば、間違いなく11,000kmを超えている。CARACLE-S2015モデルの走行距離が4,723km、猛虎四號は5,850kmなので、実はこの2年半で一番良く乗った自転車なのだ。
まずはお疲れ様。フレームはくたびれていないので、いつか再び活躍してもらうためにバラしてフレームを保管しておきたいと思っているが、場所を確保できるかどうか・・・。
鉄下駄號からひとまずシュパーブプロのブレーキレバーを取り外す。コマンドシフターやiPhoneホルダーなど、他にもいくつかパーツを流用する予定。
ほとんどのパーツは載せ替えで済むが、一番の問題はハンドルポジション。2015モデルでは社内に転がっていた試作のテレスコピック式ハンドルポスト(オフセット0度)を無理矢理使用していたが、2016モデルでは純正テレスコピックハンドルポスト(オフセット6度)を発売した。
上部パイプの外径が28.6mmなので、本来のハンドルクランプを切断してアヘッドステムの装着が可能であり、ブルホーンバーやドロップバーを装着してポジションを合わせることが可能になった(メーカー保証外の加工になるが)。
オフセット角度が異なることに加え、ハンドルバーも変えるので、改めてステム長を検討する必要がある。計算上は6度の差でポスト高250mmなら約26mm突き出しが大きくなる、ハンドルバーのリーチが5mm大きくなっているので、合わせて約30mmの差。
とは言え、ハンドルバーの形状や取付角度、ブレーキレバーの装着位置などで、ポジションは大きく変化する。カタログスペックがあてにならないのは、以前も体験済み。最終的には乗り込んでみないと確定はできない。それでも、少しでも現在のポジションに近づけたところからスタートするために、2015と2016モデルの比較を行った。
2015モデルを壁に立てかけて、BBを基準に壁にブレーキレバーの位置をマーキングする。
続いてTORACLEにホイール等のポジションチェックに必要な最低限のパーツを装着し、カーボン製ハンドルバーにも外したブレーキレバーを装着して2015モデルと比較する。
ブラケットポジションを基準にすると、60mmステム装着状態で、約20mm遠い。2015モデルは70mmステムを装着しているので、同じステム長ならブラケットが約30mm前方にくるということで、ほぼ計算通り(もし、ステムやハンドルが同条件であればハンドルコラム位置は約25mm前方になる)。
つまり、40mm前後のステムを用いれば、2015モデルに近いブラケットポジションを得られるということ。
とは言え、これも精密なものでなく、ちょっとした角度調整で5mm程度は変化してしまう。もちろん、ブラケット以外の場所も使用するのがドロップハンドル。ひとまず40mm程度のステムを調達して、乗り込んで確かめるしかなさそうだ。
35mmや40mmのステムはいくつか選択肢があるが、MTB用でデザインがゴツいものが多い。ロード用のスマートなデザインのものは少ないのが難点。
私の調べた限りでは、市販の31.8mm径アヘッドステムは最短32mmのものが存在している。前に突き出すタイプはこれより短いサイズが原理的に不可能と思われる(コラムとハンドルバーが接触するため)。重量やデザイン面では不利だが、コラム上方に突き出すタイプや可変長タイプには、もっと短いものもあるようだ。
続いて、7/10のトレーニングの後は、アヘッドステムを装着するため不要になるハンドルコラムの上部を切断した。
そして、まず握ることのなさそうなハンドルバーの先端も、大胆にカット。
・・・したが、カーボン製だけに軽量化効果はごくわずか。カット部分の重量を計測すると2個合計で15gと表示。もっとも、計測単位が5g刻みなので、10~20gの範囲の可能性がある。
つごう、ハンドルバーの重量は220~230g程度になったということ。
次はいよいよ2015モデルを分解する不可逆の作業に入る。TORACLEが組み上がるまでは、CARACLE-Sに乗れない。
チェーンはミッシングリンクを使用しているので、簡単に外せる。チェーンホイールの取り外しには、コッタレス抜き締め工具が必要。
BB(ボトムブラケット)の取り外しは苦戦。緩みやすい右ワンは渾身の力で締め上げろ、という古い(?)教えが染み付いているので、装着時には思い切り締め込んでおり容易に外れない。
工具がズレないように、プレートをボルトで固定して再挑戦。何とか外れた。
パーツ取り外し作業の途中で気づいたのだが、タイヤ(パナレーサー ミニッツライト)のトレッド面の大きく剥がれていた。そろそろ替え時かとは思っていたが、出先でバーストする前に気付いてよかった。
昨年8/12の交換からの走行距離は約3,500km。20×1.25サイズなので、700cタイヤと比べればタイヤ周長が30%少ない。ということは30%早く消耗するということで、700Cなら5000km相当ということ。軽量タイヤにしてはまずまずの寿命だろう。
ディレーラーやブレーキ、ボトルケージなど、移植予定のパーツも、2015モデルから取り外していく。
これらのパーツのクリーニングと、新導入パーツの加工など、下準備はまだまだ残っている。完成はいつになることやら(^_^;)。
「TORACLE(虎来る號)組立て その2」に続く
ご注意:本記事は、久行の個人的趣味とテック・ワンの技術検証を兼ねて行っているもので、同様のカスタマイズに対して安全性や耐久性を保証するものではありません(自動車会社のF1やワークスマシンみたいなものと思って下さい)。安全性に問題がなく、ご要望の多いものは純正品に取り入れる可能性もあります。興味のあるパーツや加工については、ご意見をお寄せください。
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